研究実績の概要 |
高密度低沸点媒体(FC-72)と低密度高沸点媒体(水)を組み合わせた非共溶性媒体による強制対流沸騰において、昨年度までの実験結果から、伝熱面における沸騰冷媒が切り替わる「沸騰冷媒遷移」は全体流量に対する高密度低沸点媒体の比率が高い場合(2/3以上)を除き、基本的に生じることがわかっている。つまり、高密度低沸点媒体の液量ではなく、液量割合が重要なファクターであった。ただし、沸騰冷媒遷移後に水の核沸騰に移行した後の高熱流束領域では、FC-72の液相は流路上には存在せず、水の気相・液相とFC-72の気相のみとなるため、水は飽和状態となり、限界熱流束は通常の水の飽和沸騰と同程度となることがわかった。 今年度は、FC-72が伝熱面上にはないがシステム内に存在する場合の伝熱特性を実験的に検証するため、流速0の静止流体中で実験行った。伝熱面周囲に液体が貯められる溝を作り、伝熱面の高さを基準として、溝の中のFC-72の液高さを-3, 0, 1, 3, 5, 8, 10 mm(溝なしの場合に相当)に変化させてた。その結果、(1)伝熱面の高さよりも低い場合(-3 mm)でも、FC-72の液相が存在していれば、限界熱流束は水の飽和沸騰よりも大きくなる。本実験では最大2倍程度となった。この数値は-3, 0, 1 mmでほとんど変化はなかった。(2)FC-72の液高さが5 mmよりも高くなると沸騰冷媒遷移が生じない。(3)液面高さが3, 5 mmの場合は、沸騰冷媒遷移が生じる。 以上から、これまでおよび今年度の結果を総合すると、「強制対流沸騰系で沸騰冷媒遷移を生じさせながら、限界熱流束を増大させるためには、伝熱面周りにFC-72の液相が存在する状況下で、FC-72の流量比率が2/3以下である条件」が、非共溶性混合媒体を用いた強制対流沸騰のパフォーマンスを最大限に引き出す要因の一つであると結論づける。
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