弾性変形による発熱パターンの詳細を把握しその分配を明確にするため,平面と球面の接触部位を要素現象と捉え,詳細な温度計測と実験パラメータの関係に基づく伝熱モデルを構築し,また雰囲気圧力の影響を把握することを本研究提案の最終目的としている。 初年度は上下の端面を一定温度に制御した球体-平面間の接触熱抵抗の大気中における静的実験により,球体や平板内部の温度分布を計測することで接触点を通過する熱流束と接触熱抵抗を求め,接触熱抵抗,熱伝導度,および接触面積の関係を記述できる伝熱モデルの構築とシミュレーションによる検証を実施した。引き続き2年目は,上記データの拡充,および外部から接触加重(面圧)を変化できる真空チャンバーを作製し,雰囲気気体としてN2またはHeの圧力を100Paから100000Paまで変化させ,また面圧を変化させたデータを取得した。 そして3年目および最終年度では,分子運動論に則ったシミュレーションを構築し,雰囲気圧力が大きく変化する場合における気体分子が運ぶ熱エネルギーが計算可能なプログラムの構築および計算を行い,実験と併せて以下の結果が得られた。(1)N2分子のFe面での反射を拡散反射を仮定して計算を行ったところ,雰囲気圧力と熱抵抗の実験で得られた関係を定性的に再現することができた。(2)金属表面の粗さを平均面間距離を一定としてマクロ的に変化させたところ,面間の熱流束は表面粗さの形状に依存することがわかった。(3)分子が壁面に衝突する際のエネルギーや運動量の受け渡し比率を表す適応係数は気体や金属の種類で異なるが,その適用係数を変化させると同じ形状の面でも熱抵抗が異なり,実験によるフィッティングが可能。これらは,これまで殆ど報告されたことが無い貴重なデータであり,研究は目標をほぼ達成することができた。
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