研究課題/領域番号 |
19K04228
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
阿部 陽香 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (70462835)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 比熱容量 |
研究実績の概要 |
比熱容量・熱伝導率は、あらゆる物質の熱的特性を明らかにするために不可欠な物性値であり、その値をより正確に測定するため、様々な測定法が多くの研究者によって提案されてきた。しかしながら、近年開発がなされている多種多様な物質・材料を評価するにあたり、適切な測定法が見つからないというケースも多く、新しい測定法の確立は、学術及び産業界において強く望まれている。本研究では、球形の構造を用いた熱量計により、熱放射の影響を正確に算出できる比熱容量の測定法を提案し、新しい装置を開発することを目的としている。さらに熱伝導率測定においては、球形の構造を用いることにより、熱放射による試料側面からの熱損失が無視できる新しい測定法を提案し、その装置の試作を実施する。 今年度、比熱容量測定に関しては、昨年度に引き続き装置製作を行うとともに、LabVIEWによる測定プログラムの整備を行った。製作した装置の健全性評価のため、熱容量標準物質(NIST SRM720、合成サファイア)にトレーサブルなサファイア試験片を用意し、室温における比熱容量測定を実施したところ、良好に測定できることを確認できた。また室温での測定を行ったことにより、室温以上の測定における温度制御等の問題点も抽出することができた。 熱伝導率測定については、温度センサーと加熱用ヒータを埋め込んだ球状熱源を製作し、それを球殻の中心に設置し、その球殻と球状熱源の間に測定試料を詰めて測定する構造を試作した。測定プログラムをLabVIEWにより作成し、試作装置を用いて、高分子材料の測定を試みたところ、温度測定が難しく、温度をより高精度で測定する必要があることが明らかとなった。温度測定としては、現在熱電対を使用しているが、より正確で安定な白金抵抗温度センサーを用いた温度計測システムの検討を行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果により、比熱容量測定については昨年度から継続して装置製作を行い、試験測定につなげることができた。熱伝導率測定についても、装置の試作を行い、実際の測定を試み、今後の問題点等を抽出することができた。従って、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
比熱容量測定については、室温以上の温度範囲での測定を実現するため、試料セルを囲む球殻遮熱シールドと保護ヒータでの温度制御・ヒータ加熱方法等を再検討し、最適化を図る。熱伝導率測定については、温度制御に関する課題に取り組むため、より高精度な温度センサーと温度計測器を導入し、試作装置での測定実現に向けて研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
比熱容量測定装置については、温度制御のための保護ヒータ加熱用電源の購入検討を計画している。 熱伝導率測定装置については、温度測定をより精密に行う必要が生じたため、高精度温度計測装置を購入する予定である。
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