研究実績の概要 |
本研究では,ダイレクトカーボン燃料電池(DCFC)の燃料であるチャーが観察可能であり,反応サイトのマーカーとして機能する点に着眼し,DCFCの発電メカニズム解明を目標としている.プレス型DCFC(電解質:溶融炭酸塩)を使用して,アノード側の炭酸塩中の炭素分率を1.0, 2.0, 3.0, 5.0 wt%と変化させ,発電特性の計測を行った.発電後,アノード側の活性炭/溶融炭酸塩の充填層の観察を行い,画像から炭素充填率および炭素と電極の見かけの接触面積を算出した.炭素分率の増加に伴い,DCFC出力が増大し,炭素分率が3.0wt%のとき,30mW/cm2程度の連続安定発電を実現できた.炭素と電極の見かけの接触面積基準の電流密度-電圧曲線では,反応が律速する低電流密度領域において,セル電圧が炭素の重量分率によらず,ひとつの曲線に収束する特徴が見られた.このことから,DCFCの発電性能の向上には,炭素と電極の接触面積の増加が重要であることが明らかになった.その一方で,炭素分率を5.0wt%とした場合,連続発電が困難となった.これは,発電時の気泡生成により,充填層内部のイオン輸送抵抗が増大したためと考えられる.また,アノード側よりもカソード側の過電圧が大きく,高出力化のためには,カソード側の改良が必要であることを明らかにした.そこで,高機能カソードを使用できる固体酸化物形燃料電池(SOFC)と溶融炭酸塩を組み合わせたハイブリッドDCFCの開発を進め,その燃料極側(Ni/YSZ)のマルチスケール観察に取り組んだ.X線透過により,溶融炭酸塩中の炭素の輪郭をオペランド観察できることを示した.Ni/YSZ界面における炭素の酸化反応をミクロレベルで考察するため,第一原理計算コードVASPを使用してNi/YSZ原子モデルを構築した.マクロから原子レベルで固体炭素の反応を理解する基盤を構築した.
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