都市上流部に発生する局所的豪雨による被害の予測のため,ヒートアイランド現象に伴う局所的集中豪雨の予測と,土壌内の地下水移動の予測を目的とし,数値シミュレーション及びタンクモデル構築に向けた実験を実施し,以下に要約する成果を得た. (1)ヒートアイランド現象による局地的集中豪雨の予測 海風の進行に伴う局地的前線の移動を非定常数値シミュレーションにより予測した.都心部を考慮しない場合前線は,陸部深くに速やかに進行するのに対し,ヒートアイランド現象を起こす都市部の存在により,局地的前線は,都市部の少し山側にとどまり強い上昇流を発生し局地的前線が強まることで,比較的長い時間に集中的な降水が発生し危険が強まることが判明した.海陸風循環に対しヒートアイランド現象が及ぼす影響が判明したことにより都市部の内陸部に発生する局地的豪雨の発生メカニズムが判明した. (2)多孔質体を用いたタンクモデルによる地下水流動の予測 地下構造内を移動する地下水流の予測としてタンクモデルが用いられるが,地下構造の複雑さを十分反映しているとは言えない.今回タンク内に多孔質体を入れることで地下構造の特徴である気孔率や透過率が新たに導入された.新たなモデルにより多層のタンク内の流動の非定常挙動が明らかになった.気孔率や透過率は,寸前の降雨による地質の変更によって変化することが予測され,降雨が断続的に続いた後の災害予測のためのタンクモデルの変更への可能性を示した. (3)多孔質体を用いた4段タンクの非定常水流動の実験 4段のタンクを作成し,降雨開始時より,地下構造を下層に向かう水流量の時間変動の様子を計測した.多孔質の毛細管力に関係しタンク側面から流出する流れが軽減し,多孔質内に含有する水分保持の様子が明らかになった.タンクモデルへの多孔質体導入に向け含水性能を示す指標が必要であることが判明した.
|