研究課題/領域番号 |
19K04238
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
西田 耕介 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (00397043)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱工学 / 燃料電池 / レーザ計測 / 吸収分光法 |
研究実績の概要 |
固体酸化物形燃料電池(SOFC)における熱的・機械的劣化や炭素析出の問題を解決し、耐久性の向上を図るためには、実作動状態の電池内部で生じている反応や物質輸送現象を包括的に解明することが不可欠である。そこで本研究課題では、高耐熱光ファイバプローブを導入した高感度なレーザ分光計測システムを開発することにより、従来実測が困難であった高温作動環境下でのSOFCセル内の水蒸気、二酸化炭素、メタン等の濃度分布を高速・高精度かつin-situ(その場)で定量測定できるようにすることを目的とした。 2019年度は、レーザ分光法により高温燃料電池内のガス濃度測定を直接行えるようにするため、「高耐熱光ファイバプローブ(第1次試作機)」の設計・製作を行った。本プローブは1本の投光用ファイバと1本の受光用ファイバが同軸上に一体化された構造であり、ファイバ素材には1000℃でも良好な光伝送特性を有する石英ガラス系ファイバが採用されている。また、熱膨張によるプローブの破損を防ぐため、プローブ外周部の保護管には高温域でも熱膨張率が低いアルミナ管(外径:2.0mm、耐熱温度:1900℃)を使用している。 続いて、上記で試作した光ファイバプローブの耐熱性・耐久性を評価するため、電気炉を用いることにより高温大気雰囲気下での水蒸気のレーザ分光計測を実施した。電気炉内の温度を800℃まで上昇させてもプローブの変形や破損、ファイバ素線の断線等は見られず、大気中水分の光吸収による明瞭なスペクトル信号が検出できており、光ファイバプローブを用いた高温環境下での過熱水蒸気の光センシングに成功した。レーザの発振波長を変えることにより、二酸化炭素やメタン濃度も測定可能である。 以上より、本研究で開発を進めている高耐熱光ファイバプローブは高温燃料電池(SOFC)内のガス濃度計測に十分適用できる見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザ分光法による高温燃料電池内のガス濃度測定を実現させるためには、電池内部に直接挿入することが可能な「高耐熱光ファイバプローブ」の開発が不可欠である。本研究課題では、十分な耐熱性・耐久性を有する光ファイバプローブの設計・製作を行い、800℃の過酷な高温環境下においてプローブを用いた過熱水蒸気の吸収スペクトル測定に成功している。本研究で開発した光ファイバプローブが高温燃料電池(SOFC)内のガス濃度計測に十分適用できる見通しが得られたことから、研究はおおむね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高温燃料電池内の水蒸気、二酸化炭素、メタン濃度を高速・高精度かつin-situで分析する手法として、波長可変半導体レーザ吸収分光法(TDLAS法)を応用した「光ファイバプローブ型レーザガス分析システム」を開発する。この計測システムは、2019年度から開発・改良を進めてきた高耐熱光ファイバプローブを搭載しており、高温状態(800℃)で稼働している電池内部でもガス濃度の定量分析を“その場”で行うことが可能である。また、発振波長の異なる3台の半導体レーザを切り替えるのみで3種類のガスを迅速かつ簡単にセンシングできる点に特長があり、1台の計測システムのみで反応ガスの多成分測定が行える。本研究では、高速・高感度なレーザ吸収分光法である「波長変調分光法(WMS法)」を採用し、加えて複数の出力信号を合成する独自のノイズ除去技術を導入することにより、実作動状態SOFCの狭小流路内における各ガス成分の濃度分布を100msの時間分解能かつ±1.0 mol%以内の高精度で定量測定できるようにする。それにより、供給ガス流量や電流密度等の運転条件や電池の流路形状がSOFC内のガス流動現象や反応プロセスにどのような影響を及ぼすのかを明らかにし、発電性能向上のための最適な電池構造の設計指針について議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度(2020年度)に購入する予定である半導体レーザや光学部品等の価格が上昇しているため、今年度の助成金の一部を次年度に繰り越し、次年度の助成金と合わせて使用する計画である。
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