固体酸化物形燃料電池(SOFC)の耐久性の向上を図るためには、実作動状態の電池内部で生じている反応や物質輸送現象を包括的に解明することが不可欠である。そこで本研究課題では、高耐熱光ファイバプローブを導入した高感度なレーザ分光計測システムを開発することにより、従来実測が困難であった高温作動環境下でのSOFCセル内の生成ガスの濃度分布を高速・高精度かつin-situ(その場)で定量測定できるようにすることを目的とした。 2021年度は、レーザ分光法により高温燃料電池内のガス濃度測定を直接行えるようにするため、「高耐熱光ファイバプローブ」の改良を継続して実施した。本プローブは1本の投光用ファイバと6本の受光用ファイバが同軸上に一体化された構造であり、ファイバ素材には1000℃でも良好な光伝送特性を有する石英ガラス系ファイバが採用されている。また、熱膨張によるプローブの破損を防ぐため、プローブ外周部の保護管には高温域でも熱膨張率が低いアルミナ管を使用している。 上記で試作した光ファイバプローブの耐熱性・耐久性を評価するため、高温環境下に設置したSOFCセルのガス流路内における水蒸気のレーザ分光計測を実施した。その結果、セル温度が600℃を上回ると水分の吸収スペクトルの信号レベルが大幅に低下しているのが確認された。これは、プローブ内の光ファイバケーブルが断線したためと考えられる。500℃までの環境下では光ファイバプローブを長期連続で使用することが可能であるが、500℃以上の高温環境下でプローブを使用する際には、ファイバ素線のコーティング方法を見直し(例えば、セラミックコートに変更する等)、ファイバの断線を抑制する工夫が必要であることが明らかとなった。
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