研究課題/領域番号 |
19K04242
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小糸 康志 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70347003)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒートパイプ / 自励振動 / 伝熱促進 / プラスチックシート / 3Dプリンター / HFE |
研究実績の概要 |
研究目的のプラスチック薄板の薄型化,ならびに,加熱部と冷却部におけるヒートパイプ流路壁の熱抵抗の低減を図るため,薄いプラスチックシート上に自励振動式ヒートパイプを形成した.具体的には,厚さが0.21mmのABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)シート,厚さが0.12mm,0.25mmのPC(Polycarbonate)シート上に3Dプリンターを用いてヒートパイプの蛇行流路を形成した.3Dプリンターの素材には半透明のABSフィラメントを,ヒートパイプの作動液にはHFE(HydroFluoroEther)7100を用いた. プラスチック薄板の各プロトタイプについて,初年度と同様に,一端を加熱ヒーターにより加熱,他端を冷却ジャケットにより冷却し,蒸発部,断熱部,凝縮部の温度を熱電対で測定して,プロトタイプの有効熱伝導率と最大熱輸送量を評価した.また,半透明のABSフィラメントを使用しているため,ヒートパイプ内の撮影も行い,自励振動現象の解析も行った.ABSシートを用いた場合,ヒートパイプの流路形成時にシートが流路内側に変形する現象がみられた.これにより,ヒートパイプの流路が狭くなり,さらに,加熱ヒーターおよび冷却ジャケットとの接触熱抵抗が大きくなったため,有効熱伝導率ならびに最大熱輸送量の増加量は限定的であったが,PCシートを用いた場合はその影響はほとんど無く,0.12mmのシートの場合,最大で432W/(m・K)の有効熱伝導率,16.8Wの最大熱輸送量を得た.最大熱輸送量については初年度の実験結果の1.87倍である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラスチックシート上に自励振動式ヒートパイプを形成することができたこと,実験により初年度のプロトタイプの1.87倍の最大熱輸送量が得られたことから,本研究の目的に照らし,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果を踏まえ,ヒートパイプの流路設計と使用条件を変化させた実験を追加実施し,高速度ビデオカメラで撮影した映像の解析も行って,ヒートパイプの薄型化の影響を整理する.また,自励振動現象が生じる最小の流路サイズを調べ,薄型化によるヒートパイプの作動限界も明らかにする.以上をまとめ,自励振動式ヒートパイプの設計学理を構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,本研究に必要な消耗品を絞り込むことにより生じたものである.本使用額は次年度の消耗品費に充てる計画である.
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