気液界面に存在する柔軟な固体薄膜・皮膜の動きを気液流動とともにシミュレーションすることを可能とする技術およびソフトウェアの開発を目的とし,研究を推進した。薄膜の運動を再現するために,その膜の一部の代表点として粒子を設定し,粒子間に膜の物理特性を表現するバネを配置する「多粒子系膜モデル」を採用した。シミュレーションプログラムのベースとして,オープンソースソフトウェアのOpenFOAMを採用した。これにより,様々な計算機環境でのシミュレーションが可能となる。この研究で開発したプログラムが,研究室で所有するパーソナルコンピュータやワークステーションだけでなく,スーパーコンピュータやクラウドコンピュータでも動作することを確認した。この研究成果によって,開発した技術およびソフトウェアが幅広い学術および産業界で活用されることが可能となった。 開発したプログラムでは,単純な引っ張り変形を高精度に再現することが可能であることを理論値と比較して確認した。曲げに関しては15%程度の誤差が生じる。この原因について検討し,せん断ロッキング現象に相当するものが要因の1つであることを見いだした。解析精度の向上に向けて,このせん断ロッキング現象の影響を低減する手法を検討した。1つはバネの定式化を変更する方法であり,もう1つは擬似的に複数のバネを配置する方法である。これらの手法を取り入れたプログラムの開発を進めた。 複数バージョンのOpenFOAMに組み込み可能なプログラム,および,それを使った検証例題の整備を進めている。これらの成果物は,広く一般に公開するためのリポジトリに格納している。細部の見直しを継続しており,問題ないことを確認した後に世界へ向けて公開する予定である。
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