研究課題/領域番号 |
19K04247
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
菅野 望 名城大学, 理工学部, 准教授 (40529046)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 反応素過程 / 詳細反応モデル / 推進薬 |
研究実績の概要 |
宇宙機の姿勢制御用スラスター燃料であるヒドラジン誘導体(ヒドラジン,モノメチルヒドラジン,非対称ジメチルヒドラジン)の高温熱分解反応の反応解析と酸素燃焼反応のモデル構築を行った. 熱分解,燃焼いずれにおいても重要であるヒドラジン誘導体からの H, CH3, NH2 による水素原子引き抜き反応について量子化学計算を行った.ヒドラジンへの CH3 基置換数の増加(ヒドラジン→モノメチルヒドラジン→非対称ジメチルヒドラジン)に伴い反応生成物と遷移状態のエネルギーが減少し,それらの間にエバンス-ポラニー則に従うことが確認された.量子化学計算で得られた結果を用い,遷移状態理論により各反応速度係数を計算したところ,特に室温付近では量子トンネル効果が重要であり,小曲率トンネル補正を施すことにより既往の実験計測値を再現する計算精度が得られ,各ヒドラジン誘導体の生成物毎の素反応速度パラメーターを決定した. 上述の反応素過程を反映したモデルを構築し,非対称ジメチルヒドラジンの高温熱分解反応速度,酸素燃焼における着火遅れ時間,予混合層流燃焼速度の数値計算を行い,既往の実験計測値と比較することでモデルの検証を行った.非対称ジメチルヒドラジンの酸素燃焼における着火遅れ時間は,既往の実験計測値を良く再現した.予混合層流火炎速度に関して,本モデルは燃料過濃領域では実験報告値を良く再現するが,燃料希薄領域では若干過小評価する傾向が確認された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,ヒドラジン誘導体単体での熱分解速度,酸素燃焼に関する詳細反応モデルを構築した.2020 年度に実施予定の酸素燃焼の反応解析についても,単体燃料での解析は既に実施しており,モデルの精度に関する問題点を抽出することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
非対称ジメチルヒドラジン/酸素予混合層流火炎速度の反応解析を進め,燃料希薄条件での精度向上を試みる.またヒドラジン/非対称ジメチルヒドラジン混合燃料に関する着火遅れ時間や予混合層流火炎速度の数値計算を行い,燃料混合比と着火・燃焼特性の関係を明らかにする. 比較対象となる実験計測報告は,年代的に古く実験計測の精度が明らかでないものも含まれるので,構築したモデルの反応解析や入力パラメーターの検証により実測値への再現性が充分に向上しない場合は,恣意的な(過度な)合わせこみは行わず定性的な議論を進める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 購入した計算機(特注品)の構成機器の価格変動による. (使用計画) 計算機のメモリや記録メディアの拡充に用いる.
|