研究課題/領域番号 |
19K04255
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
浅野 文彦 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (70415066)
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研究分担者 |
徳田 功 立命館大学, 理工学部, 教授 (00261389)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 物体搬送 / 動的操作 / 同期現象 / 軸回転摩擦 / 移動ロボット / 運動生成 / 劣駆動システム |
研究実績の概要 |
劣駆動移動ロボットを駆動源とした物体搬送・動的操作システムに関して、2020年度は主に以下の成果を得た。 8脚の能動リムレスホイールをステージ上下動のための駆動源とし、8脚の受動リムレスホイールを搬送物とした物体搬送システムの実機検証結果を論文にまとめ、国内会議および国際会議へ投稿し、成果発表を行った。この結果は、歩行運動の観点からは、環境のダイナミクスが歩行の安定性や移動効率に多大な力学的影響を与えることを示唆するものである。これを踏まえ、本研究課題に並行して、受動的に上下振動をする浮島上を歩行する劣駆動脚式ロボットの運動生成問題にも新規に取り組み、数値シミュレーションを通して床面の粘性係数やロボットの目標重心軌道が歩行性能に大きな影響を与えることを明らかにした。そして床面の動特性の重要性に着目した新規検討課題として、複数台の正多角形型物体を搬送物とした自動整列・分別の実現に関する問題を設定し、まず受動的に振動する傾斜したステージ上を2台のリムレスホイールが異なる初期状態から受動歩行を開始することを想定した運動解析用シミュレータを開発し、ステージの粘性係数に応じた歩行周期の変化や同期現象の傾向を明らかにした。 軸回転摩擦を利用した物体搬送システムに関して以下の結果を得た。回転軸の傾斜角度を1.0 [deg]~6.0 [deg]の範囲に設定し、軸回転速度を徐々に増大させ、テストピースの安定な搬送が可能な範囲内で搬送速度を測定した。搬送速度を軸回転速度の1次~4次の多項式として近似を行い、このうち4次多項式が最も高精度な近似値を与えることを示した。また全ての実験データを整理し、軸回転速度と傾斜角度を入力することで搬送速度を出力できる計算ツールをエクセルを利用して作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、ステージの上下動を利用した物体搬送システムと軸回転摩擦コンベアの実験的検証に関しては一定の成果が得られ、国内会議や国際会議において主要な結果の発表を行うことができた。前者の研究を通して得られた知見に基づき、浮島上を歩行する脚移動ロボットの運動生成や無動力の上下振動ステージを用いた自動整列・分別システム等への取り組みも新たに開始され、最終年度へ向けた研究目標も明確に定まった。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は以下の研究を推進する。 複数台の搬送物体を自動的に整列・分別する革新的搬送システムに関して、次の問題に取り組む。受動的に上下振動をする傾斜したステージ上に外形が正多角形である物体を複数個配置し、各物体およびステージに適切な初期状態を設定することで生成される運動の時間発展を観測する。物体間の位相差等の物理量を解析することで、ステージの粘弾性や物体の外形・質量・大きさ等に応じた自動整列特性の変化傾向を明らかにする。また、理論的結果の妥当性を検証するための実験システムを開発し、照合実験を行う。これに並行して、これまでに開発した実験機を用いた各種搬送システムの理論検証実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を論文にまとめ、国内会議や国際会議へ投稿したが、すべての発表はオンラインで行われた。このため旅費を使用する機会が一度も無く、予算に大幅な余裕が生じる結果となった。未使用額は、最終年度に小型トレッドミルや搬送物の製作のための経費として使用する予定である。
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