劣駆動移動ロボットを駆動源とした物体搬送・動的操作システムに関して、2021年度は主に以下の成果を得た。 複数台の正多角形状の物体を搬送物とした自動整列・分別に関する解析を推進した。2台の搬送物が受動的に振動をする傾斜したステージ上を運動する際、初期角速度やステージの粘性に応じて、定常状態において異なる位相関係が現れることを明らかにした。また2台の外接円の半径の比をパラメータとして変化させると、これが1に十分に近い場合には同じ歩行周期に同期すること、歩行周期の比を評価量としてプロットをするとカントール関数となる(歩行周期が整数比の値をとりながら不連続に変化する)ことなどを明らかにした。更に高い自由度をもつ搬送物として2台のコンパス型2脚ロボットを導入し、同様の運動解析を通して、ロボットとステージを統合したシステム全体が多周期の安定な運動を生成すること、ステージの粘性が大きい場合にはロボット間の力学的干渉が弱まることで同期が起こらなくなることなどを明らかにした。 摺動と揺動を利用した移動ロボットの設計論構築および物体搬送システムへの応用に関する理論的研究を推進した。ロボット単体での高速前進運動生成の困難を突破すべく、鉛直方向のみに受動的に振動をする揺動質量を搭載したユニット2台を直動関節で結合した新しい匍匐型移動ロボットのモデルを提案した。運動解析を通して、2台の揺動質量が互いに逆位相で振動をする際に、ユニット間距離を最適な位相差をもつ正弦波の時間軌道へ追従させることで、各ユニットの接地点における動摩擦力に非対称性が生まれ、前進・後退運動の速度を最大化できることを明らかにした。次に、このモデルの後方ユニットを粘弾性要素を介して環境に接続し、前進運動生成を行うことでその推進力を変換し給紙操作を実現できることを確認した。解析結果を踏まえ、理論検証用実験システムの設計開発も行った。
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