粒状ダンパは,運動エネルギーを利用して,振動体と粒子間の衝突あるいは摩擦エネルギーとして消費するダンパである.現在,高級オーディオラックの制振材として鋳鉄粉が利用されているが,鋳鉄粉のような粒子が非常に小さい粒状体の制振効果とメカニズムを調べた研究は少なく,その技術的応用が期待されている.本研究では,粒子が非常に小さい鋳鉄粉の制振メカニズムを基礎的な実験から明らかにするのが第1の目的である.さらに,鋳鉄粉を用いた制振効果の実現象への応用を図るため,自励振動現象である,ディスクブレーキの鳴きおよび強制振動系であるオーディオラックの制振に対する応用を試みる.令和3年度は,以下の2つの項目について研究を実施した.研究実績の概要について以下にまとめる. 1.基礎的アプローチ アクリルケースに鋳鉄粉あるいはステンレス球を付加し加振実験を行い,損失係数を求め両者を比較した.その結果,加振周波数によって,鋳鉄粉あるいはステンレス球で損失係数の値に違いが生じること,また,鋳鉄粉においては損失係数の増加に伴い,衝突するタイミングが遅れることが確認された.また,段付き円板で発生する摩擦自励振動に対し,鋳鉄粉およびステンレス球を付与し,制振効果を調べた結果,鋳鉄粉の方がより少量で制振できることが確認できた. 2.応用アプローチ 前年度ディスクロータのリブに質量を付加し,鳴きを抑制できることがわかった.今年度は鋳鉄粉を付加し,その効果を比較した.その結果,鋳鉄粉は集中質量よりも少ない質量で鳴きを抑制できることがわかった.さらに,打撃試験から質量付加はディスクロータの固有振動数を低下させる効果があるのに対し,鋳鉄粉は固有振動数の変化は見られず,減衰比が増加しており,質量との効果の違いを確認できた.
|