本研究は複雑な動きが要求される産業機器への応用を目指し、一体の構成で直動と回転駆動を可能にする多自由度電磁アクチュエータの高出力化および新たな制御技術を示すことを目的としている。昨年度は直動または回転を単独に駆動したときのアクチュエータ機器定数を算出した。本年度は直動と回転を同時に駆動したときを想定した数学モデルを作成するために直動と回転の両巻線に通電したときの回転・直動側の自己インダクタンスと相互インダクタンスを算出した。その結果、可動子の鉄心突極を介して相互インダクタンスに影響を与える2組のd-q軸電流の組み合わせが明らかになった。新たに導出した機器定数をもとにアクチュエータの等価回路および数学モデルを作成し、直動(回転)側の1自由度および直動と回転を同時に運転したときの推力・トルク特性を高い精度で評価できるようになった。次に数学モデルを用いて要求する推力・トルクを実現する各巻線電流の配分法(電磁力マネージメント)を検討した。直動・回転巻線に使用可能な最大電流値を設定し、直動・回転を同時に駆動したときの直動・回転の両巻線のd-q軸電流配分法を示した。推力・トルクのうち高出力優先側に対して非優先側の余剰電流をd軸電流として振り分けることによって優先側の出力増加が可能であることが分かった。鉄心突極に形成される電磁石は両巻線電流により界磁磁束の強さを自在にコントロール可能である。そのため、突極を適切に設計することによって高出力化が可能になる。 本技術は可動子を固定子の外側におくアウター駆動型や円筒状を平面状に切り開いた2次元リニア同期モータへの転用も可能である。
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