研究課題/領域番号 |
19K04265
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
赤木 徹也 岡山理科大学, 工学部, 教授 (50311072)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低コストホームリハビリテーション機器 / 周拘束強化式伸長型柔軟空気圧アクチュエータ / ゲート機構式低コストサーボ弁 / 球面駆動式手首リハビリテーション機器 / 空気圧駆動ポータブルリハビリテーション機器 / 屈曲チューブを利用した低コストサーボ弁 / 組込みコントローラ / センサレス駆動システム |
研究実績の概要 |
研究成果は以下の通りである.まず,昨年度開発した手首のポータブルリハビリテーション機器に関して,並列配置の3本の伸長型柔軟空気圧アクチュエータ(EFPA)を,両端から中央部に向かう毎に配置半径を大きくした球面駆動の柔軟アクチュエータを用いて,センサレスで目標軌道に沿った駆動が可能な姿勢制御システムの構築を行った.具体的には,安価なOn/off弁を一定周期毎に間欠的に操作した際のアクチュエータの挙動をモデル化し,弁操作に対するEFPA内圧とアクチュエータの湾曲角を推定するモデルを組込みコントローラ内に構築することでアクチュエータの姿勢制御を行うシステムを提案した. また,手首のリハビリテーション用に正四面体の3辺にEFPAを配置し,四面体形状を構成するように樹脂製の板で拘束した四面体型柔軟アクチュエータを構成した.さらに,そのアクチュエータの中心変位と頂点部の傾斜角から,各EFPA長さを導出するモデルを提案し,そのモデルをもとに提案リハビリテーション機器の任意軌道の姿勢制御を行った.さらに,正四面体の各辺の部分に昨年度開発した周拘束強化型のEFPAを配置することで任意の四面体形状に変形が可能な柔軟アクチュエータをポータブルなリハビリテーション機器への応用のため構成した. また,水環境下で使用する配管検査ロボットとして,昨年度試作した並列配置のEFPAの蛇腹にフィンを設置した繊毛型配管検査ロボットに改良を加え、各EFPAを数珠つなぎに繋いだ配管内に適切な絞りを設けることで、自動で湾曲動作を繰り返す駆動システムを構築し,ロボットのモデルをもとに適した絞り径を算出し、直管での走行速度が改善するとともに弁のon/off動作だけで,曲がり管も含め複雑な管路の走破が可能なことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在のところ,安価な伸長型柔軟空気圧アクチュエータ(EFPA)を用いた球面駆動式ポータブルリハビリテーション機器のセンサレス駆動システムの構築を行った.これは,この機器を風呂やプールの中など水中での使用や,感染予防のための洗浄を考慮し,既存の変位センサは使用することなく機器の姿勢制御を行うことを試みた.具体的には,間欠的なOn/Off弁の操作に対する各EFPAの内部圧力変化と機器全体の湾曲角変化などの状態量を推定するモデルを構築し,そのモデルをもとに姿勢制御を行うシステムを,組込みコントローラを用いて実現した. さらに,手首のリハビリテーション用に開発したEFPAを用いた正四面体型アクチュエータの姿勢制御として,アクチュエータの中心変位と四面体先端部の傾斜角から,各EFPAの長さを導くモデルを提案し,そのモデルを基にした姿勢制御を実現した。 また,水環境下で使用可能な繊毛型配管検査ロボットにおいて,自動で湾曲や伸長・収縮を行う機構を,センサやコントローラなどを使用せずに実現した.具体的には,ロボット内の3本のEFPAを数珠繋ぎに直列に配管し,その接続管中に所定の絞りを加えることで,圧力変化に遅れを生じさせ,On/Off弁1つの給排気操作により上述の動作を実現した.さらに,この最適な絞りの大きさを解析と実験により求めた. 以上のように,本年度は機器の低コスト化のため,センサや弁などの周辺機器を減らしつつ,所望の動作を実現するため,機器のモデル化やそのモデルを用いた姿勢制御や最適設計について検討した.また,コロナ禍のため学会発表でなく,研究成果の国際的な学術誌への投稿を増やした.以上のように.本研究の目的であるウェアラブル空気圧制御機器の更なる「低コスト化」のための制御手法の開発や改良など多くの研究成果が得られており,本研究は計画通りに順調に進んでいるものと自負する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発した伸長型柔軟空気圧アクチュエータ(EFPA)は,その拘束方法をかえることで,所望の操作を実現できる柔軟アクチュエータが実現できる.そこで,任意動作を生じるアクチュエータの設計手法について検討し,その手法を活用しながらリハビリテーション部位に適した動作が行える安価・軽量なリハビリテーション機器の開発を行う予定である.また,家庭での使用を考慮し,家庭で身近に使える流体圧力源である水道水圧を低コストで制御できる弁の開発についても検討する.また,これらの流体制御システムにおいて最も高価な制御機器は制御弁である事実から,低コストの制御弁の高性能化についても検討する.具体的には,低コストの小型サーボ弁として開発したチューブの屈曲角を安価なRCサーボモータで変えることで流量調整を行う弁に,小型の組込みコントローラと圧力センサを用いた搭載型の圧力制御システムを構築し,圧力制御型の低コストサーボ弁を提案する予定である.また同様に,一昨年開発したゲート機構とダイヤフラムをも用いたゲート機構式サーボ弁に対しても圧力制御型弁への改良を行う予定である.さらにこれらの開発した弁を用いて,昨年度開発した様々なリハビリテーション機器の姿勢制御システムの安価な駆動システムの構築をめざす。 本申請では,これらの研究の推進もさることながら,国内外での学会等への研究成果報告を目的の一つに掲げている.しかし,一昨年末から,COVID19の影響により,開催予定の国際会議が延期もしくは規模縮小になっており,さらに,国内の学会も縮小傾向にあるなど有効な研究成果発表の場が少なくなっている.そのため,研究成果を学会発表よりInternational Journal等へ投稿にシフトさせながら研究成果の公表を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
機器の開発に使用していたレーザ加工機が、耐用年数の経過により、近年多くの修理を必要とし、今年度は一時使用できない状態にまで陥った。このレーザ加工機は、本申請の機器の薄肉樹脂パーツの切り出しや、溝加工に必要不可欠な機器であり、レーザ加工機が使えない状態になると、研究が全く遂行できない状況に陥る。そのため本申請の研究の遂行のため、新たなレーザ加工機の購入をする必要性が生じたため前倒し支払い請求を行う。その残金として次年度繰り越し金が生じた。 また、コロナ禍により本来申請していた研究成果発表による旅費等の支出が減ったため、主に論文投稿に注力しており、この前倒し申請による本年度の研究計画に影響はないものと考える。
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