研究課題/領域番号 |
19K04269
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武田 量 北海道大学, 工学研究院, 助教 (90645095)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膝関節 / 流体構造連成解析 / 靭帯線維束 / 力学試験 |
研究実績の概要 |
本研究では①関節組織の物性値測定,②流体-構造連成解析と③関節滑液付加実験を通して関節滑液が膝関節安定性に寄与するメカニズムを解析することを目的としている.①では力学試験を通して膝関節の各組織の物性値を特定する.①で得られた結果を②のモデルで入力し,関節滑液が及ぼす関節内の圧力.応力分布を計算する.③ではEx-vivo実験では膝モデルの関節滑液を制御し,関節運動時に掛かる荷重・トルクを測定する.②と③の結果を比較して関節滑液の影響を定量的に評価・検証する. 以上の目的を達成するために以下の研究目標を基に3年間で研究を進める計画である:研究目標(A)膝関節滑液付加実験プラットフォームの構築,研究目標(B)膝関節組織材料物性値測定実験,研究目標(C)膝関節滑液が靭帯支持力に及ぼす影響を調査,研究目標(D)膝関節流体-構造連成解析モデルの構築. 2019年度は主に研究目標(A)と(B)を進めた.研究目標(A)に関しては万能材料試験機,6軸力覚センサ,シリンジポンプの,膝関節固定用治具からなる実験用プラットフォームのの設計及び制作を行った.研究目標(D)に関しては,膝モデル(ブタ後膝関節)のMRIの撮影を行い,膝関節モデルの3次元の形状抽出に成功した.抽出した3次元形状データより,大腿骨,脛骨,前十字靭帯,後十字靭帯個々のソリッドモデルを作成した.これらのソリッドモデルを汎用の有限要素解析ソフトで再構築し,文献値から得た物性値を入力した膝モデルの有限要素シミュレーションを構築した.こちらのシミュレーションで膝関節の引出し試験を実施した結果,過去に報告された靭帯の支持力と比較した結果高い相関が得られた.また,ヒトの有限要素モデルも構築し,膝の屈曲伸展動作が内側側副靭帯の長さや形状変化に及ぼす影響も調査した. また,今年の実績報告としては国際学会で1件,国内学会で2件の発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度で予定していた,研究目標(A)膝関節滑液付加実験プラットフォームの構築がやや遅れている.所属している機関の建物の移設及び新型コロナウィルスの影響により研究活動が一時休止せざるを得ない状況となった.計画としては膝関節の予備実験まで進める予定ではあったが,所属機関の研究活動再開後に実施する.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は研究目標(A)膝関節滑液付加実験プラットフォームの構築の完成と研究目標(B)膝関節組織材料物性値測定実験開始を実施予定である.研究目標(A)に関しては構築したプラットフォームで関節モデルを用いて装置検証目的の予備実験を行う.研究目標(B)に関しては,豚後膝関節を用いて膝関節内組織(靭帯線維,半月板,軟骨)の物性値を特定する.靭帯線維束(ACL,PCL,LCL,MCL)には変位vs.荷重の支持力測定試験を行い,引張荷重に対する支持力を推定する.半月板と軟骨組織はインデンテーション試験を行い弾性率計算する.また現在,これまでの研究成果を基に国内学会で2件の発表を予定している. 現在,北海道は新型コロナウイルス感染症の「特定警戒都道府県」に指定されたため,所属機関である北海道大学の教職員も在宅勤務対応となっている.したがって,研究活動制限により研究目標(A)と(B)の実施が困難な場,合研究目標(D)膝関節流体-構造連成解析モデルの構築を進めてゆく予定である.特に流体-構造の連成解析手法の確立を行う予定である.研究活動制限解除後速やかに研究計画通りに実施できるように心掛ける.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の成果発表を行う予定の学会の開催が中止となってしまったため,予定より旅費が少なかった.また2019年度は実験用のプラットフォームの構築が遅れていたため,膝モデルを用いた予備実験が実施できなかった.次年度は速やかに研究計画通りに実施できるように,実験の消耗品の購入を行う予定である.
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