研究課題/領域番号 |
19K04274
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
宮本 弘之 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (20336100)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 全方向移動装置 / 球型車輪 |
研究実績の概要 |
移動機構は走行安定性が最重要課題の一つであるが、従来の全方向移動機構は走行安定性に問題があった。それに対して申請者は外乱に強く安定した走行が可能な球駆動方式全方向移動機構を開発してきた。しかし、球を駆動するロータが滑り、高い走行安定性を維持するため、球と駆動ロータを圧接するアイドラの定期的な調整が必要であった。また、弾力性のある滑り難い材質の駆動ロータは耐久性が低い、という問題があった。そこで本研究では、駆動ロータの弾性に依存しない全く新しい機構、具体的には、台車の荷重を駆動ロータの圧接力に分散する駆動ロータの配置方法を提案する。本機構が完成すると、弾性が少ない代わりに耐久性の高い駆動ロータが使え、かつ走行安定性の更なる向上が可能となる。さらに圧接力生成をアイドラに頼らないので、調整やメンテナンスが不要となる。ミニチュアの試作機で有効性は確認したが、実用化のステージに進むには、人間が搭乗できるサイズの試作機で設計パラメタの最適化を図る必要がある。本研究開発の目標が達成されたあかつきには、全方向移動が可能な搬送台車、電動車椅子、パーソナルモビリティ等の実現に直ちに応用可能である。しかし、段差や任意方向への進行方向変更時に球とロータ間の圧接力が低下し滑りが生じたとき、モータの動力がロータを介して球に伝達されにくくなるため、走行が不安定となる。 直径20cmの大径の球を用いた台車を製作し、走行時のロータと球の滑りを計測したが、滑りの発生はほぼ無かった。本研究課題で提案する傾斜支持型球駆動式全方向移動装置の有効性が示されたが、傾斜角度を変更した試作機で更なる検討を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大径の球の制作:2019年度に、より高い段差乗り越えや、凹凸の激しい床面に対応するため、直径20cmの球を作成した。2020年度では、20cmの球に対応した車体を新たに設計、製作し、走行性能検証を行った。従来の直径10cmまでの球では、センサーの設置スペースが狭く駆動ロータと球の間の滑りを直接計測することは困難であった。直径20cmの球を用いた結果、球と車体の間の空間に余裕が生じて、センサの設置が容易となった。そこで、球の回転計測用にレーザー式マウスを用いた。走行性能検証と同時に球の回転を計測し、球のロータの間に滑りが生じるかどうかを確かめた。120kgの錘を負荷として台車に搭載した状態で走行実験を行った。レーザー式マウスによる球の回転計測と、サーボモータの回転データ収集を同時に行い、検証したところ、球とロータに大きな滑りは生じなかった。急加速と急停止時に台車の移動方向にわずかな乱れが見られたが、ロータの滑りではなく、大きな負荷に対してモータのトルクが不足していたことが原因であった。通常行わないほどの急激な加減速により生じた走行の乱れなので、モータの性能が不足していたわけではなく、傾斜支持型球駆動装置が極めて有効であった、と解釈することができる。
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今後の研究の推進方策 |
大径の球を用いた試作機の改造:2020年度では、直径20cmの球に対応した車体を新たに設計、製作し、走行性能検証を行った。レーザー式マウスを用いて球の回転速度を計測することが可能になったので、2021年度では、ロータの傾斜角度を変更した試作機を新たに設計、製作し、走行性能検証を行う。ただし、2020年度に製作した試作機のモータやプーリなど、再利用可能な物を最大限に活用し、製作費用を削減する。2020年度の試作機ではロータと球の滑りは生じなかったが、2021年度の試作機でも同様に滑りが生じないかどうかを確認する。また、床面お凹凸や傾斜などの外乱があるときの走行性能を検証して、傾斜の程度の最適化を探っていく。
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