研究課題/領域番号 |
19K04278
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
長澤 純人 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (30400279)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンプライアント・ヒンジ / マイクロ・ロボット / 6脚マイクロ・ロボット / 折り紙構造 / 積層型静電容量角度センサ / 形状記憶合金アクチュエータ / 形状記憶ポリマーアクチュエータ |
研究実績の概要 |
本年度の成果は国際論文3本,国際学会発表3件,国内学会発表2件で発表された. 【1】MEMS3次元コンプライアント・メカニズムのプロセス確立:2019年度に折り紙構造によるコンプライアント・メカニズムによるロボットフレームの構成法を確立した(Asamura, Nagasawa, JJAP, 2020)の構成方法を確立した.2020年度にはシリコン,SU-8,フォトニースなどのMEMSで用いられるプロセス用材料による折り紙構造を検討したが,COVID-19による入構制限のためにプロセス作業を進めることができなかった.このため折り紙フレームにアクチュエータやセンサ,組込MPUなどの電気システムの統合を進めた(Int. MNC2020で発表, Jap. Jour. Appl. Phys. 2021 国際論文). 【2】MEMS3次元コンプライアント・メカニズムの機械的特性の評価:コンプライアント・ヒンジの機械的特性を解析して一般的なリンク機構の設計手法を確立するため,コンプライアント・ヒンジによるリンク機構の数理モデル化・3次元CADモデル化を進めた(ロボティクス・メカトロニクス講演会2020で発表). 【3】MEMSセンサやアクチュエータとの親和性の検証:ヒンジ部の角度センサとして,積層型静電容量センサを提案,試作・評価した.本センサは折り紙構造と同じ手法によって作成されるため,ロボットフレームと同時に作り込むことができる.駆動アクチュエータであるSMA(形状記憶合金)は4個のシステム変数と非線形特性を持つため,関節部の角度は直接的に測定できることが望ましく,フレームと一体化しての試作評価で角度フィードバック制御が可能であることが示された(Int. MNC2020で発表, Jap. Jour. Appl. Phys. 2021 国際論文).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は2019年度に確立したコンプライアント・ヒンジを用いたロボットフレームのMEMSプロセス化を推進する予定であった.COVID-19による入構制限により,この作業を進めることは困難であった.その代わりとして電気システムの統合や折り紙構造センサシステムの導入試作などを進めた.このため自己評価は「おおむね順調」としている.2020年度の進捗トピックは,ミニマルファブを利用したカスタムMEMSデバイスの試作を実施できたことである.ユーザーの独自設計可能でMEMSデバイスを外注できるサービスであり,今後COVID-19の状況に依らずデバイス試作ができることを確認できた. 【1】MEMS3次元コンプライアント・メカニズムのプロセス確立:2019年度に確立したフレシキブル基板(ポリイミド/銅薄膜/SU-8)によるコンプライアント・メカニズムのロボットフレームにSMAアクチュエータやMPUなどの統合した. 【2】MEMS3次元コンプライアント・メカニズムの機械的特性の評価:コンプライアント・ヒンジ構造材の弾性特性とSMAアクチュエータの駆動力でリンク機構を駆動し,自立歩行を行う6脚マイクロ・ロボットを試作した.2019年度は設計までであったが,2020年度には実機の試作と,実際に歩行させたときの特性評価の実施を行った.また,フレーム構造体部分に関して,形状記憶ポリマーを用いた自動折り上げ機構も試作できた.この項目に関しては,計画以上に進展している. 【3】MEMSセンサやアクチュエータとの親和性の検証:積層型静電容量センサによる,コンプライアント・ヒンジの角度センサは,2019年度に確立した折り紙構造を使って試作された.ロボットのフレームと同じ手法で作成されるため,フレームと一体に組み込むことが可能であること,MEMSプロセスに適用し易い手法であることが特徴である.このセンサシステムの導入と試作・評価は概ね研究計画どおりの進捗である.
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今後の研究の推進方策 |
【1】MEMS3次元コンプライアント・メカニズムのプロセス確立:6足歩行マイクロ・ロボットの統合試作・評価は計画よりも早めに展開できているため,2021年度はMEMSプロセス化を集中して推進する.フォトニース/銅めっき/SU-8またはシリコン/フォトニースor CytopのMEMSプロセスを当初の目標プロセスとする.シリコンプロセスを候補にする理由は学内設備のDeepRIE装置が豊洲キャンパスに移設されたため,シリコンプロセスが試しやすくなったためである. 【2】MEMS3次元コンプライアント・メカニズムの機械的特性の評価:コンプライアント・ヒンジ部分の機械的特性,材料の弾性特性とアクチュエータの駆動特性に関して,コンプライアント・ヒンジ部を設計どおりに動かすための,構造体部分の機械的剛性が不足しがちである課題が見えてきた.これは実機の6足歩行マイクロ・ロボットを計画よりも進めて試作できたことによって明らかになった課題である.構造体部分は折り上げによってトラス構造となるように設計されるが,トラス構造のアスペクト比が大きくなってしまう部分での歪が大きくなる.単純なトラス構造だけでなく,リブ構造やフランジなどの部分的強度構造のための折り曲げ構造を検討する. 【3】MEMSセンサやアクチュエータとの親和性の検証:当初の計画どおり,積層型静電容量センサを折り紙構造のコンプライアント・ヒンジ部と一体化させて,角度フィードバック制御が可能であることまで示せている.2021年度は計画に従ってMEMSプロセス化を進めながら,アクチュエータとの統合を進める.アクチュエータはこれまで利用してきたSMA(形状記憶合金ワイヤ)を予定している.SMAと積層型静電容量センサでフィードバック制御の実現を目指す.その後,積層型静電容量センサをセンサだけでなく,アクチュエータとしても用いる方法に関しての検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCOVID-19による入構制限があり,当初予定していたMEMSプロセス化の作業をほとんど進めることができなかった.このため,プロセス材料を購入するための費用を2020年度に持ち越す必要が生じた.その他の研究項目を進めたので,研究プロジェクトの進捗は進んでいる.
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