マイクロロボットなどの可動部分を有するマイクロシステムでは,部品の組立てが困難である.小さい部品を把持しながら,目的の取付場所で,方向を合わせつつ組立てなくてはならない.この問題の解決手法の一つとして,弾性変形部と高剛性の構造部を一体化して作成するコンプライアント・メカニズムの利用が提唱されており,部品の組立てを簡単化できる.本研究はMEMSプロセスによるコンプライアント・メカニズムを実現することを目的とする.研究期間全体では査読付国際論文4件,2021年度は国際学会4件,国内学会6件で発表した.
(1)2020年度までにMEMSコンプライアント・メカニズムのプロセスを確立した.2021年度はこのプロセスで6足歩行マイクロ・ロボットを試作した.ロボットフレーム部を折曲トラス構造から,SU-8厚膜レジストによる単純構造にしたことで,より組立易く小型(組立状態で代表長約50mm)にできた.また形状記憶ポリマーによるコンプライアント・メカニズムの自動組立に関しても検討を進めた. (2)コンプライアント・メカニズムの機械的特性を画像解析により解析・評価した.一般的なリンク機構を設計するため,コンプライアント・ヒンジによるリンク機構の数理モデルを検討し,3次元CADモデル化した.4節リンク機構に関して本モデルの有効性を確認している. (3)コンプライアント・メカニズムのMEMSセンサやアクチュエータとの親和性を検証した.2021年度には積層型静電容量角度センサとコンプライアント・メカニズムを一体化した構造に,SMA(形状記憶合金ワイヤ)をアクチュエータとして組込み,角度フィードバック制御可能なロボット関節ユニットとして試作・評価した.この角度センサとコンプライアント・メカニズムは1枚のフレキシブルPCB基板から,折紙構造で組み立てられるため,MEMSプロセスに応用展開可能である.
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