本研究の目的は,非線形制御系の性能を保証できる制御入力・パラメタ変動・外乱などの範囲や条件を決定する制御系の検証問題を,複数プレイヤによる微分ゲーム問題として定式化し,数値的な最適化手法を用いて検証する汎用的・実用的な手法を開発することである.システムを最悪状態に陥れようとするプレイヤ1が最適戦略をとった最悪状態において,システムの性能を維持しようとするプレイヤ2の最適戦略が有効であるなら,最悪条件下における制御系の性能保証ができることになる. まずパラメタ変動・外乱をプレイヤ1,制御入力をプレイヤ2として2人のプレイヤによるゲーム問題として制御系検証問題を定式化した.制御対象は非線形微分方程式に従って運動するので,非線形な微分ゲーム問題となる.このような問題の数値最適化手法を確立することを目指し,まず最初に解析的に最適解が得られるLQゲーム問題を最適制御の数値解法であるDirect Multiple Shooting:DMS法,Direct Collocation:DC法で解き,解析解と比較して数値解の精度を確認した. 続いて,解析解が得られない非線形微分ゲーム問題を同様な手法で解き,数値計算手法相互の比較を行った.その結果,システムが高次でありかつstiffである場合,DC法ではセグメントを小さく取らないと解の精度が悪くなり,計算時間の面で問題があることが確認された.本研究で取り扱う実際的応用例である車両運動制御系は,タイヤ力の発生と車両運動は大きく時定数が異なる高次のstiffなシステムであるため,DC法の適用は不適当であると判断された. 最後に,高自由度の車両モデルに対する微分ゲーム問題の数値解法としてDMS法を適用し,妥当な解が得られることを確認した.これにより,実際的な制御系の検証問題を非線形微分ゲーム問題として解く手法の有効性が確認されたものと判断される.
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