本研究では、モード切り換え型制御系(MSC)を用いて磁気浮上型の鉄道車両における浮上位置の制御系を構築する。最終年度は、提案したMSCの制御器設計アルゴリズムの有用性を評価した。具体的には以下のとおりである。 1)外乱推定および抑制問題に対処する設計法の開発:制御モードを滑らかに切り換えるための方策として、モードの切り換えをステップ外乱の印加ととらえて外乱を推定する方法を検討した。しかしながら、推定性能が十分得られなかったので、次数を1次高めてランプ状の外乱を推定可能な方法を検討した。ただし、実装の都合上推定器の次数を高めることは難しいので、ステップ外乱の推定器と同次数でランプ状の外乱が推定できるよう工夫を行った。他方、外乱抑制問題については、本研究で考察した行列方程式の求解アルゴリズムを適用して、制御系の安定化と指定した外乱抑制率での外乱抑制が両立できるような制御器の設計法を構築した。また、制御器実装にあたり演算時間遅れが想定される。それを補償するための方法として既に提案されている限定極配置法を改良して、本来自動的に決まってしまう時間遅れに起因する極を安定化する制御器の設計についても検討した。 2)実験による有用性の検証:実時間制御ツール及び既存のディジタル信号処理装置を併用して制御器を実装しMSCによる実験検証を行なった。その際、同定モデルには表れない振動の励起とモード切り換え時における不安定化の影響が現れた。本制御系では振動モードによる外乱を抑制し、かつ切り換えによる不安定化の影響を無くすための方策として準強安化を達成する制御器構造とした。その結果、切り換え時の不安定化は解消されたものの、理論上の振動抑制率とはなっていない。今後の研究計画としては、モデル化誤差や外因性信号の影響を考慮して、設定した振動抑制率になるロバストなMSCによる制御器の設計法を考察する予定である。
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