研究課題/領域番号 |
19K04285
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研究機関 | 徳山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鈴木 厚行 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 准教授 (40450142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波振動 / 衝撃軽減 / 衝撃吸収 / 高張力鋼板 / 樹脂 / Blaha効果 |
研究実績の概要 |
令和2年度は超音波振動を用いた物体軟化装置として施策した2種類の超音波衝撃軽減装置と1種類の超音波プレス加工機を用いて以下の研究を行った。 1つ目の超音波衝撃軽減装置は超音波で樹脂を溶かして衝撃を軽減するタイプである。超音波振動による効果が大きな材料を見つけ出すことを目標に、これまで試したことのない材料を用いて実験した。融点やガラス転位温度が超音波を印加した時の衝撃軽減率に関係していると推測し、融点やガラス転位温度が近くない4種類の樹脂(ポリエチレン・ポリエチレンテレフタレート・ポリカーボネート・ポリアセタール)の丸棒に超音波振動子を押し付けた状態で衝撃を印加し、衝撃軽減特性について検討した。今回測定を行った樹脂全てが衝撃の軽減をすることが確認できた。超音波なしに比べて超音波ありの軽減率が最も大きかったのがポリアセタールで約10.5%軽減された。 2つ目の超音波衝撃軽減装置は超音波で高張力鋼板の変形抵抗を低減して衝撃を軽減するタイプである。振動振幅をより大きくするためにあらたに試作したホーンを用いて実験し、変形試料の曲がり角が増加し、頭部損傷値(HIC)が低減することを確認した。 超音波を適用したプレス加工機を用いた実験では広い面積のプレス加工への応用を試み,超音波振動の印加方法などを探った。実験装置の振動特性や試料の変形特性等について検討した。金型を広範囲で振動させることになるが、加工に影響しない部分にも振動が伝播し、加工部の振動振幅が小さい問題があったため、振動的に不要な箇所は極力削り落とした。また、無駄な振動の伝播を防ぐために複数のスリットを設けた。しかし、振動分布を改善できず、超音波を印加してプレス加工をしてもその効果は確かめられなかった。プレス加工機の一部のみを用いた短冊状の曲げ試料を用いた場合には変形量が増加することが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つ目の超音波衝撃軽減装置(樹脂による衝撃軽減)に関する実験では、衝撃をどの程度吸収できるか測定するためのシステムも作っていたが完成はしなかった。しかし、システムも大枠は作成できたため、今後の実験に生かすことができる。これまで測定していなかった材質の試料を用いて実験データも取得できた。まだ明確ではないものの、材料の融点やガラス転位温度が関係する可能性のあるデータも取得できた。 2つ目の超音波衝撃軽減装置(HIC測定)に関する実験では、振動子の改良を図った。実験データも取得でき、超音波を用いてHICを低減できることがわかった。しかし、超音波による振動がノイズとなって本来の衝撃のみによる波形を測定できていない。これまでの研究ではノイズをある程度除去できていたが、なんらかの原因によってノイズが発生している。この問題が解決できればよりHICを低減できることが示せる可能性がある。 超音波プレス加工機に関する実験では、金型の改良に苦心したが、実験データは取得した。当初予定していた大きさのプレス試料では明確な超音波の成果も得られなかった。変形させる試料の幅を狭くするなど、限定した条件では超音波の効果が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
各種装置の基礎となる実験装置は概ねでき、超音波を印加して効果を確かめる実験が進められる状況にある。場所に限定される実験が多く、人員が必要な実験もあることから、新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては実験ができなくなる時期もあるかもしれないが、ある程度リモートでも研究を進められるようにしたい。 1つ目の超音波衝撃軽減装置(樹脂による衝撃軽減)に関する実験では、材質の違いによる影響をより詳細に分析して、適した材料を見つけたい。速くて強い衝撃に対してはゴムのように変形する衝撃吸収ナイロン・衝撃吸収素材であるαGEL・ABS樹脂などに超音波振動を印加し、軟化特性を測定したい。衝撃がどの程度吸収できたか計測するシステムも完成させたい。 2つ目の超音波衝撃軽減装置(HIC測定)に関する実験では、超音波振動子と被変形物との接続方法を複数パターン変えたときに伝播する振動の振幅を測定し、最も効率よく振動が伝播する接続方法を探りたい。振動子の改良もする予定である。 超音波プレス加工機に関する実験では、十分な大きさの超音波振動は得られていないようであり、今後は超音波振動のエネルギが金型部で分散しないように工夫した金型を試作し、超音波によるプレス加工の効果を確かめたい。
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