令和3年度は超音波振動を用いた物体軟化装置として自動車のボンネットを保持する機構を模した構造体に超音波振動を印加し、頭部損傷値の低減効果について検討した。衝撃を印加して変形させる試料は厚さ 2.3 mm の高張力鋼板(WEL-TEN590RE)とした。また、衝撃吸収特性を測定するためのシステムを開発した。 令和2年度までの研究では超音波振動がノイズ源となり、加速度の波形にノイズが重畳してしまうことから正確に頭部損傷値を測定することができなった。基台を分離することやヘッドインパクタが衝突する箇所にゴムを設置することに加え、ヘッドインパクタの設置にゴムブッシングを用いることでノイズをほぼ除去することができた。実験条件によって超音波振動を印加したほうが頭部損傷値が大きい結果になってしまうこともあったが、超音波振動を印加することで僅かながら頭部損傷値が低減することもあった。加速度波形についても同様であった。超音波振動によって変形試料である高張力鋼板の変形量が増加することは確かめられた。しかし、超音波振動による頭部損傷値の低減効果は明確には示せていない。十分な振動振幅の超音波振動が印加できていない可能性が高いため、超音波振動子の設計や超音波振動子の設置方法などを見直すことが望まれる。 令和2年度までの研究では超音波振動の印加によって衝撃力が低減することは示せていたが、衝撃エネルギーを吸収できていることは示せていなかった。令和3年度は圧電型ロードセルとリニアエンコーダの出力をマイコン(Arduino)やパソコンを用いてデータ処理してCSV形式のデータにするシステムの構築を行った。データのグラフ化はできたものの、圧電型ロードセルとリニアエンコーダの出力を同じタイミングで取得できていないことや、衝撃印加後に変形試料が振動することなどから、衝撃が吸収できていることを示すには改良が必要である。
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