研究課題/領域番号 |
19K04291
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
関 啓明 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (20270887)
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研究分担者 |
辻 徳生 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (30403588)
平光 立拓 金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (70845536)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 油圧駆動 / 2段変速 / ロボットアーム / 油圧源シリンダ / 位置制御 |
研究実績の概要 |
介護ロボットやレスキューロボットなどには、状況により高速に動く動作(高速駆動)と大きな力を出す動作(高圧駆動)が求められるが、その両立はなかなか困難である。本研究では、そのような人間共存型ロボットアーム用のスマートな油圧駆動機構を提案し、実証することが目的である。アイデアとしては、制御性の良い油圧源として、モータやボールネジで駆動される油圧シリンダを持ち、そのピストンの両側間のオイルの移動を弁で切り替えることで、送り出すオイルの流量と圧力を2段階に変えて大きく変速させる。 初年度では、予備実験装置により提案する2段変速の原理を確認し、システムの効率化のため、損失について検討した。高圧駆動においては、油圧源シリンダのピストンの両側のオイルを行き来させる配管の損失が大きいことが分かり、その改善を行った。 もう1つの大きな損失は、油圧源シリンダの摩擦である。本年度は、まず、この摩擦を軽減するため、油圧源シリンダのロッドを回転させながら押し込む方法を検討した。シリンダを直動する際にロッドを回転させる機構を付加し、直動・回転比を変えながら、摩擦が小さくなるような条件を調べた。その結果、静止した状態から動かす場合や低速で動かす場合において大きく摩擦を減らすことができた。 また、ロボットアームの複数の関節を動作させることを想定して、複数の出力シリンダの位置を制御する方法を構築した。切換え弁で断続的に複数のシリンダにオイルを送り込んで制御する方法である。負荷の方向によって、出力シリンダにオイルを送り出して制御するモードと吸い出して制御するモードを使い分ける必要もある。そのため、油圧源シリンダもそれらに対応して2本化した。改良した実験装置により、さまざまな負荷条件において、ある程度滑らかに位置制御できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
油圧源シリンダのピストン両側のオイルの行き来を電磁弁で制御することにより簡単に2段変速させるというのが本研究の基本アイデアである。 初年度においては、この提案原理を基礎的な実験装置を試作して確認できた。また、この油圧駆動システムを有効にするには、油圧駆動の大きな問題である損失の改善が欠かせない。その検討を予備実験やシミュレーションによって行い、大きな損失の部分を明らかにして、一部を改善することができた。 2年目にあたる本年度においては、さらに油圧源シリンダの損失を減らすため、シリンダのロッドを回転させながら直動させる機構を考案し、直動・回転比率を変えた実験等により、回転の効果を特に低速の直動時に示すことができた。また、複数の出力シリンダの制御する方法を構築した。油圧源シリンダを送り出し用と吸い出し用に2本化し、実験装置を試作して、切換え弁で断続的にオイルを送って制御する方法を組み込んだ結果、様々な負荷がかかった状態でも複数の出力シリンダの滑らかな位置制御がある程度できることを示せた。 以上のように、予定していた計画をほぼ順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ、研究計画は順調に進んでおり、大幅な変更をする必要はない。次のような予定している課題について、今後も推進していきたい。 ・油圧回路中の空気量の変更による柔軟性の付与(試算、実験装置の試作と検証) ・多自由度ロボットアームへの適用(アーム試作とデモ) 特に、多自由度ロボットアームの適用については、例えば、びんやペットボトルのふたをあけたりしめたりするときのように、ゆっくりと大きな力が必要な部分と速く小さな力で動かす部分の両方の動作があるような日常的な作業のデモを行って、本研究の効果を示したいと考えている。
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