研究課題/領域番号 |
19K04292
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
川井 昌之 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (00334805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 力触覚提示 / バーチャルリアリティ / バーチャルカップリング / 受動性 / 非整数階微分 |
研究実績の概要 |
本研究は、人工現実感の力覚提示において仮想物体表面の様々な硬さの質的な感触の違い(「ぷよぷよしている」や「ねっとりしている」など)をバーチャルカップリング(VC)のみを用いて表現する提示手法の確立を目的としている。この提示手法を実現するため、本研究では非整数階微分項を利用して周波数領域での受動性を設計する手法を提案している。これに対し平成31年度は、研究実施計画で予定していた(1)「表面硬さ特性値計測システムの構築」、(2)「代表物体での表面硬さ特性値と受動性の周波数特性の検証」、(3)「複数の非整数階微分項を用いたVCの最適化手法の改良」を行うとともに、この研究を実施している過程で見つけた(4)「粘着剥離感を感じるVCの受動性分布の考察」も行った。 (1)では、アクチュエータとロードセルを組み合わせた動的粘弾性測定装置を独自に製作し、いくつかの代表的実物体(ゴミボールや大福、羊羹などの柔軟物体)の加振時の表面粘弾性の周波数特性の計測を行った。(2)では、それらの実物体に対して計測された表面硬さ特性値から、タッピング動作を対象とした場合に必要となる代表的な受動性の周波数特性の抽出方法を検討するとともに、受動性のパラメータ同定を行った。(3)では、今まで提案していた最急降下法による最適化手法に代わり、新たに計算アルゴリズムの高速化を図ることで部分的な領域における全探索法を用いた最適化手法を構築した。また、これを用いて、より細かい受動性の周波数特性の設計を行い、様々な感触を体感しつつ、その際のVCのパラメータを確認できるVC見本の構築を行った。さらに(4)では、ある周波数分布の受動性を設計した場合に、粘着物から指を引きはがすような触感が得られることが分かったため、そのための条件と理由の考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施計画では、今年度、 (1)「表面硬さ特性値計測システムの構築」 (2)「代表物体での表面硬さ特性値と受動性の周波数特性の検証」 (3)「複数の非整数階微分項を用いたVCの最適化手法の改良」 を実施する予定であったが、これら全てを実施した。さらに、研究実施中に粘着剥離感を感じるバーチャルカップリングが見つかったため、(4)「粘着剥離感を感じるVCの受動性分布の考察」も追加して実施した。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに推進する予定である。 令和2年度は、研究実施計画の通りに(5)「各種実物体表面の特徴抽出と受動性の周波数特性の算出」を進め、(6)「各種実物体に対応する複数の非整数階微分項を用いたVCの設計」を行う。特に、様々な対象物に対して受動性の周波数特性の抽出を行い、その抽出された特性データを用いて最適化を行ったVCによる実験を実施するとともに、その有効性や離散値系では表現できない高周波帯の受動性の影響などを考察する。 さらに、平成31年度に新たに追加した(4)「粘着剥離感を感じるVCの受動性分布の考察」を進展させ、粘着剥離感を感じるVCを実際の仮想環境へ実装する予定である。
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