研究課題
本研究全体の計画では,形状記憶ゲルとワイヤ駆動機構を組み合わせ,軽量で多関節を持つ多指ロボットハンドおよびその制御方法を実現することを目指している.形状記憶ゲルは,温度により硬軟の切り替えができる性質を持つゲルであり,より詳しい説明は初年度の実施状況報告書に記載している.本年度は,1個のモータで多関節を駆動できるロボット指の開発を進めた.この指は,形状記憶ゲルの硬軟切替とワイヤ駆動機構を組み合わせることで,指定した1関節または複数の関節だけを回転させる.例えば,指定した1関節の形状記憶ゲルを軟化させてモータを回転させるとその関節だけが回転し,全関節の形状記憶ゲルを軟化させると全関節が同じ方向に回転して物体に巻き付くような動きになる.また,異なる関節の軟化,硬化を逐次的に行うことで,2関節を逆方向に曲げる動きなども可能である.各関節を正負の方向に回転させるために,2本のワイヤを使用するが,骨格構造の追加やワイヤ経路の適切な設計により,一方のワイヤの巻き取りと他方のワイヤの送り出しを1個のモータで実現している.この原理を用いた7関節のロボット指を試作し,実験により動作原理の有効性を確認した.このロボット指を3本用いたロボットハンドも試作し,多指ロボットハンドの指として利用可能であることも確かめた.昨年度までに開発した3次元空間内で動くロボット指についても,ユニバーサルジョイントを用いた骨格構造を追加した改良型の機構を考案し,基礎的な試作と実験を行った.このロボット指の全機能の動作確認はまだ行えていないが,考案した内容の部分的な有効性は確認することができた.
2: おおむね順調に進展している
ロボットハンドの機構の開発については大きく進展した.一方で,ロボットハンドの制御については関節の基礎的な動作の確認にとどまっている.部分によって進展のばらつきが大きいが,研究全体としてはおおむね順調に進展している.
今後は,機構の改良を進めるととともに,様々な対象物の把持実験を行いながら,ロボットハンドの制御方法や動作計画に特に注力して,研究を進める.
新型コロナウィルスの影響により,前年度に続いて本年度も,発表した国際会議がオンライン開催となり,旅費を使用しなかっため,支出が大きく減少した.また,物品費についても本年度は金額の大きな物品を購入しない部分の研究が主に進展したため,支出が少なかった.残額は,次年度,実験装置の拡充に充てるほか,対面の学会に参加する際の旅費にも充てる予定である.
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International Journal of Mechatronics and Automation (a revised and expanded version of 2021 IEEE ICMA Proceedings paper)
巻: Vol.9, No.2 ページ: 99 - 111
10.1504/IJMA.2022.122325
Proceedings of 2021 IEEE International Conference on Mechatronics and Automation (ICMA)
巻: - ページ: 1472-1477
10.1109/ICMA52036.2021.9512604