研究課題/領域番号 |
19K04299
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
林 隆三 東京理科大学, 工学部機械工学科, 准教授 (80505868)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 交通機械制御 / 自動車 / 自動運転 |
研究実績の概要 |
本年度は,切り返しを含む走行経路検討の第1段階として,1回以上の切り返しが必要となる道路条件の定式化と,1回の切り返しを含む走行経路計画手法の検討を行った.その結果,切り返しが必要かどうかの判定は幾何学的車両モデルを用いた走行軌道計算により解析的に判定可能であることがわかり,また,切り返しが必要な場合には1回の切り返しを含む走行経路計画を行って狭小交差点を通過するアルゴリズムが開発できた. ただし,必要な切り返し回数の導出や切り返し回数を一般化した走行経路計画手法の完成には至らなかった. また,コンピュータの画面上でキーボード入力により上空視点から車両の操作を行う簡易ドライビングシミュレータを開発し,上述のアルゴリズムと人間の運転操作の比較を行った.その結果,人間の操作では2度以上切り返しをして通過する狭小交差点であっても,上述のアルゴリズムでは切り返しなし,または1度の切り返しによって通過できる事例が確認され,検討したアルゴリズムの有効性が示唆された. さらに,次年度に先駆け,今後開発するアルゴリズムの有効性実証に使用する実験車両の製作に着手した.この車両は,実車の1/10サイズの模型車両であり,実際に人間が搭乗することはできないが,実験室レベルでのアルゴリズム実証にはむしろ効率的である.測距範囲240degのレーザーレンジセンサを備え,搭載されているコンピュータによりセンサ信号の処理と制駆動および操舵の自動制御が可能である.本車両を用い,本年度は,走行環境の認識アルゴリズムの開発を進めた.現状では,2つの道路が直交する単純な形状の交差点であれば,道路幅等のリアルタイム計測が可能となっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題には予定通り取り組んだが,当初の目論見通りには研究が進まず,一部研究手法の変更が必要となった.詳細述べると,当初本年度は「道路の条件に対して必要な切り返し数の算出手法」を構築し,来年度に,「必要な切り返し数を踏まえたうえで最適な経路計画」を構築する予定としたが,研究の進捗により,この2つは表裏一体であり,どちらか一方ずつ決定することができないことが分かったためである.そこで,進め方を若干変更し,本年度はまず,切り返しの回数を1回に限定した場合に焦点をあて,その切り返しが必要かどうかと,その場合の経路計画手法について検討し,狭路交差点を通過可能な自動走行手法が構築できた.しかし,まだ最適な手法とはいえない点もあり,改良も必要である. 一方,上述のように,自動走行手法の構築は長期化が予想されたことから,本来は来年度に実施予定であった自動右左折車両の製作にも本年度から取り掛かり,走行環境認識アルゴリズムの大枠はすでに実装できている. 以上のように,経路計画手法は若干の遅れが生じていると思われるものの,車両製作の面では予定よりも進んでいることから,全体としての進捗は順調であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に則り,来年度は「最適な走行経路計画手法」と「自動右左折車両の製作」を同時並行にて進める. 「最適な走行経路計画手法」については,切り返し回数を一般化(n回切り返し)に拡張することが課題であり,既存の手法は存在しないことから試行錯誤の繰り返しにより理論構築を目指す. 「自動右左折車両の製作」においては,“走行環境認識手法の高度化”と“与えられた経路への追従手法の構築”の2課題を主軸とし,リアルタイム処理アルゴリズムを開発する.これらと簡易的な走行経路計画手法(ダミー経路生成アルゴリズム)を統合し,走行環境認識から自動走行までの一連の処理をリアルタイムで行う制御アルゴリズムを実装し,自動右左折車両として実験車両を完成させる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
総額としてはほぼ交付額通りであり,余剰金は購入時の価格の誤差程度である. 余剰金は次年度に予定している消耗品の購入に充てる予定である.
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