研究課題/領域番号 |
19K04301
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
阿部 晶 旭川工業高等専門学校, システム制御情報工学科, 教授 (30313729)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 柔軟マニピュレータ / 圧電フィルム / 振動制御 / フィードフォワード制御 / 省エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究では,2つのアクチュエータの駆動から内在する柔軟性を積極的に活用することで,柔軟マニピュレータの省エネルギー駆動におけるブレークスルーを創出することを目的とする.具体的には,サーボモータと貼付された圧電フィルムの2つのアクチュエータから構成される柔軟マニピュレータの位置決め制御問題を扱い,省エネルギー,かつ,残留振動が抑制させる新たなフィードフォワード制御法の確立を目指す.2019年度の研究実績は以下のとおりである. はじめに,1リンク柔軟マニピュレータの実験装置を開発した.長さ×幅×厚さ=515mm×36mm×1mmの真鍮製のはりを柔軟マニピュレータとして用い,固定端から30mmの位置の片側に圧電フィルムを貼付した.圧電フィルムとしては,柔軟な性質を有するMacro Fiber Composite (MFC: M-8528-P1)を使用した.なお,MFCの入力電圧の範囲は-500~1500Vである.柔軟マニピュレータの振動を計測するために,MFC貼付の裏面にひずみゲージを貼付した. 次いで,理論解析を実施し,圧電フィルムが貼付された柔軟マニピュレータの運動方程式を導出した.得られたマニピュレータの運動方程式のパラメータを,開発した実験装置による同定実験から決定した. そして,パラメータ同定実験から得られた数学モデルを用い,圧電フィルムをアクチュエータとして活用した柔軟マニピュレータの新たなフィードフォワード振動制御法を提案した.具体的には,柔軟マニピュレータの位置決め制御に対して,残留振動が抑制されるよう貼付した圧電フィルムの入力電圧波形を最適化し,フィードフォワード振動制御の実現を試みた.提案手法の有効性を検証するためにシミュレーションおよびモデル実験を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は圧電フィルムをアクチュエータとして活用した柔軟マニピュレータの新たなフィードフォワード振動制御法を提案した.そして,シミュレーション結果と実験結果は充分に一致しており,圧電フィルムを貼付した柔軟マニピュレータのモデリングならびに本手法の実現性を示し,当初予測していたような振動抑制効果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度もサーボモータと貼付された圧電フィルムの2つのアクチュエータから構成される柔軟マニピュレータの位置決め制御問題を扱い,2つのアクチュエータの相互作用によるフィードフォワード振動制御に関する検討を行う.2019年度では,圧電フィルムの入力電圧波形のみを最適化し,残留振動を抑制させた.そこで2020年度では,シミュレーションおよびモデル実験の両面から,マニピュレータの回転関節角の軌道および圧電フィルムへの入力電圧波形の2つをパラメータとし,位置決め後の残留振動抑制を試みる.そして,圧電フィルム貼付の長所と短所を明瞭にし,2つのアクチュエータの動作タイミングの最適化から,省エネルギー駆動が図られる新たな運動生成法を探求する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に発注した物品が年度内に納品されなかったことや,実験が円滑に実施できために消耗品の購入費が予定より減少したことが主な理由である.そこで繰越額は,前年度に発注した物品購入および消耗品購入に使用する予定である.
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