研究課題/領域番号 |
19K04302
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
菊池 誠 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (20270217)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非侵襲計測 / 生体制御系 / モニタリング |
研究実績の概要 |
ヒトの移動や動作に関する活動量をその動画像から定量化するシステムを昨年度に引き続き改良して、オフィス内の特定の作業者の動きを追跡することで作業者とオフィス全体の作業量を算出するシステムを試作した。また、その追跡性能を確認するために、資料動画を利用して、室内でのヒトの移動や屋外での歩行中の活動量に関して計測を試みた。ここでは特定の作業者の移動と定位置での動きを追跡することを想定して、全身を対象とする特徴抽出方法と、上半身、特に頭蓋頚椎移行部の回旋運動や上下左右の動き、頭蓋頚椎移行部の曲がりに合せて特徴点を抽出する方法の二種類の認識手法を一つのシステムの中で並行して実行した。このように二つの認識手法を組み合わせて利用することで、身体を移動させるといった大きな動きと椅子に座って仕事をするといった小さな動きの両方を評価した。また、動画像内の他の複数の対象に対しても評価値を算出して、そのカメラから撮影できるグループ全体の活動量の定性的な変化を計測するシステムを目指した。また、屋内外での歩行を追跡する場合、追跡途中で発生するヒトと物およびヒト同士の重なりや、部屋の出入り口で生じるヒトの“出現”と“消滅”の処理が必要になる。新たに認識した対象が実際は既知で過去の対象の断続的な再出現なのか、また、同じの対象でも服装などの違いで、別の対象として認識される場合があることなど、複数点で連続的に起こるこれらの出来事について対象の記録や管理が必要となることもわかった。当該年度はこの問題への対応が必要になったため、アルゴリズムを改良しながら、移動・運動方向の差による活動量の違いなども含めて試行した。その結果、必要な処理を時間内に実行するためには、対象の情報を事前に機械に登録して学習させることや、より高速な処理系が必要であることもわかった。現在は既存の装置を工夫して対応方法を試している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度も全体的には遅れている。現在は単独の把握対象を二種類の手法で認識して身体位置の追跡と上半身の動きを把握する機能がほぼできているが、空間的に複数の把握対象が混在する場合の対象の重なりの処理が不十分である。また現時点で、対象を分類する機能は小規模なものができているが、現在の機能では、対象の特徴が比較的類似している場合には対応することが難しく、さらに対象が空間的に交差した場合は交差前と交差後で把握対象を誤認して追跡に失敗することがある。当該年度は資料動画の種類を増やして、この問題の発生するパターンや発生頻度などの分析を進めてきたが、その頻度は実用上無視できないものであったことから、現段階のシステムでは、このままシステムの規模を拡張することは難しく、仮に拡張したとしても問題の先送りとなってしまうと判断して、現在の規模での解決を目指すことにした。しかしながら、現状のシステムでラベル付けに失敗しないようにするためには、対象を追跡する際の認識率をより高める必要がある。また、この機能を改善するためには、ハードウエアのさらなる高性能化が必要となるが、それは現時点では難しい。このため今後は、既存のシステムを利用して、情報処理アルゴリズムを改善することで対応する必要がある。そして、最終的には対象の移動位置を把握する機能と移動対象を個別にラベル付けする機能は常に連動する必要がある。さらに、システム全体が実用的なレベルで、正常に機能するためには、オンライン処理に必要な一連の情報処理を制限時間内で実行することが不可欠であることもわかっている。これらのことから、残念ながら、現状は全体的には遅れていると判断せざるを得ない。また、当該年度も昨年度から生じている研究の遅延が作業遂行に影響を与えており、今後も引き続き、計画の遅延回復作業に重点を置きながら順調な進展を目指す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現状では計測対象の移動で生じる対象同士の重なりや対象が計測範囲へ出入りする際のラベル付けの問題に対して、既存のハードウエアを拡張せずにアルゴリズムで対応する方策である。特に現状のシステムにおいて、ラベル付けで失敗しないために、計測対象を追跡する際の認識率の改善を目指す。このため、今後は動画像を構成する1枚1枚の画像の中から対象を抽出して正確に認識するための効果的な認識方法を導入する。具体的には対象物の認識性能が高いことで知られる教師付き強化学習を利用して、計測対象が一時的に動画像から消えても、これまで連続的に計測されていたものと同一のものであるかどうかを把握できるアルゴリズムを導入する。今後はその準備として、予想される対象を事前に登録して学習するプロセスを、システムの運用上の汎用面を考慮しながらシステムに組み込む予定である。最終的には対象の位置と移動方向を把握する機能と移動対象を個別にラベル付けする機能を連動させることで、複数の対象が交差した際にその動きの連続性から交差前の対象を間違わずに正確に追跡し続けられるシステムの構築を目指す。また、今後は現時点で購入できている装置等を組み合わせて、動画処理、特徴抽出、パターン認識、運動解析、活動量の算出の順で、著作権・肖像権等の権利上問題の無い素材を利用した検証実験を主として、研究を遂行する予定である。当面、引き続き前年度に得られた結果を検証して、継続的に装置の改良を行い、動画像と計測対象のプロファイルを関連付けるシステムの構築、データ収集及びその処理手順の改良、機械学習とそのパラメータの最適化を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は物品購入の際、市場での価格変動等により、想定した価格と実際の価格との間に差異が生じたためであり、この次年度使用額は次年度の機器周辺装置等の購入に使用する予定である。
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