研究課題/領域番号 |
19K04307
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
垣内 洋平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任准教授 (70501328)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソフトセンサスーツ / 分散衝撃吸収モジュール / 最適転倒姿勢解析 / ヒューマノイドロボット |
研究実績の概要 |
本研究は、等身大人間型ロボットで扱えていなかった大きくて柔らかいものを傷つけずに扱えるように、衝撃吸収機能を持つ多数のソフトセンサモジュールが配置されたソフトセンサスーツを、ロボットが着ることによるソフトロボットの構築法について行う。ロボット本体の柔らかさを扱うため、センサからの情報と従来ロボットが用いることのできるセンサ情報を統合し、シミュレーションと実機動作の繰り返しによって、近似的に動作が可能な動作軌道を作成し、また、扱う対象も柔らかいため、ソフトセンサスーツから得られる画像様の接触センサ情報時系列を入力として学習手法を用いることで、柔軟で変形する大型の物を含む様々な対象を学習的に適応し扱うことのできる全身を用いたマニピュレーションの構成法を構築する。その上で、扱う対象に適した柔らかさ、センサの数などのソフトロボットとしての必要な特性を導出することで、統合的な「柔らかいロボットが柔らかい対象を扱う」手法の構築を目指す研究である。 全体の研究は、1.ソフトセンサスーツの構成、2.ソフトセンサスーツを用いた全身環境接触動作、の順に研究を進め、3.ソフトセンサスーツを用いた柔軟物マニピュレーション、について行う。現在までに、ソフトセンサスーツの構成と構成したソフトセンサスーツを用いた全身環境接触動作として転倒実験を行っている。 ソフトセンサスーツの構成については、スーツの要素を構成するソフトセンサモジュールについて要素実験を行い、接触速度の低減を目的とした転倒時のシミュレーションによる環境とセンサモジュールの速度に基づいて最適なダンパ性能を持つモジュールを構成することができた。構築したソフトセンサスーツを装着した等身大ヒューマノイドにて全身環境接触動作として転倒実験を行い、研究目標通りの性能を持つスーツが構築できていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソフトセンサスーツの構成においては、ロボットの触覚として用いるセンサには、多数のセンサを指定した位置に配置すること、堅牢性、交換の容易性が求められる。ロボットが脱着可能なスーツに、壊れにくいソフトセンサモジュールを組み込むことで、多数のセンサをロボットに脱着可能に配置することができるスーツ構成を達成できた。ソフトセンサスーツの構成要素であるソフトセンサモジュールとして、空気ダンパ一体型接触荷重センサモジュールを開発した。このセンサモジュールは、空気圧によって接触状態のセンシングができ、柔軟性と衝撃吸収性を兼ね備えており、接触時の柔軟性を目的として、高強度繊維を用い縫合することで耐久性と耐圧性を満足しながら柔軟である構成を達成できた。 このセンサモジュールは圧縮されることで空気を排出し、その時に空気流路の抵抗によりダンパ性能を持たせている。空気袋内部に疎な高分子素材を配置することでバネ性を確保し、荷重が抜けたときには空気を吸い込みながら形状を回復し再び接触時に空気ダンパとして働くことができ、環境に接触した行動や、意図しない転倒などの場合にもロボットの身体と環境への衝撃を和らげることができる構成となっている。 転倒実験においては、転倒におけるダンパ性能が最大となるような空気流路の抵抗を求めるために、空気流路径の異なる複数の空気ダンパを試作して、接触する対象の速度や重量によってダンパ性能がどのように異なるかを計測した。この結果と、転倒姿勢のシミュレーションにおいて接触する部位の速度を最適化する転倒姿勢計算によって求められた接触速度を用いて、環境接触に最適な空気ダンパの流路径を決定し、転倒時に適切な性能となることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
空気ダンパ一体型接触荷重センサモジュールを全身を覆うように配置するために、無線通信によるデータ収集をできるように拡張し、全身をセンサモジュールで覆ったソフトセンサスーツを構築する。構築した全身ソフトセンサモジュールで覆ったソフトセンサスーツを用いて全身で環境に接触する動作を、シミュレーションを用いて動作生成できるようにする。ここでは、ロボットが全身を環境に接触させる動作が、シミュレーションと実機動作の繰り返しによって、ロボットスーツの柔らかさへ適応する近似パラメータの同定を行う。これは、ロボットと固定された環境における全身を接触させる動作のシミュレーションを用いた動作軌道生成と制御パラメータの同定を近似的に行う方法として、スーツを一定の厚みの剛体としてシミュレーションを行い、実機動作時に得られたセンサ値からシミュレーションモデルの修正を繰り返し行うことで、実機の柔軟性を用いつつバランスが制御された動作を実現することを考えている。ここでの検証は、シミュレーションと実機動作を交互に繰り返すことによって、実機のソフトセンサスーツを模擬できるシミュレーションパラメータを獲得することができ、様々な環境と、スーツの柔らかさに適応した動作が実機において実行できることを確認する。 続けて、ソフトセンサスーツを用いた柔軟物マニピュレーション としてソフトセンサスーツの接触情報時系列を画像様に用いた学習手法をによって、マニピュレーション動作修正が有効に行えることを示す。最終的に、この柔軟物マニピュレーションを対象物の種類毎に、実行性、精度を評価し、スーツの構成を修正変更することによって最適なソフトロボットの構成を示す。
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