研究課題/領域番号 |
19K04308
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
笹木 亮 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (00262501)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 手術支援ロボット / 微細作業 / マイクロハンドリング / 精密機械システム |
研究実績の概要 |
微細作業において生体を扱うマイクロ鉗子機構を用いて,液圧駆動を利用することで把持力および変位を推定し,生体の柔らかさや粘性抵抗などを数値化されたデータとして取得できる,生体の機械的特性を計測できるマイクロ鉗子の開発を目的とする.開発するマイクロ鉗子は液圧機構を利用し,手術支援やバイオ操作等で生体組織を扱うマニピュレータに実装可能で,生体を把持した際の反力や,接触した際に生じる微小な摩擦力などの機械的特性を3次元的に取得できるものとする.本機構の実現により,鉗子を操作するオペレータへ把持対象の状態や病理的変化を伝えることが可能となり,また取得したデータの解析により機械的特性から病理的因子を抽出することで,機械的特性の変化と病理的変化の因果関係の解明にも繋がる.将来的にはDaVinci等の手術支援用マニピュレータに力覚機能を付加することや,マニピュレータが生体の病理的変化を捉える“触診が可能なマニピュレータシステム”の実用化が望める. 2019年度では高精度なセンサ機能を有する生体把持システムを開発を行った.研究代表者は先行研究において,液圧駆動機構を用いた把持機構を開発し,供給液量と内圧変動を計測してアクチュエータにかかる力と変形量を推定する手法を確立している.この原理を基に主にラットなど試験動物を対象として,生体内での臓器や血管の把持を容易に行える把持機構の試作を行った.試作機のセンサ機構は微小部品の加工や組立が必要であるため,Kuniaki Dohda教授・Northwestern University(研究協力者)の協力の下,開発を行った.また把持実験において生体内における測定実験を行うためには,試作した機構を生体に近づける必要があるため,粗動機構としてアームロボットを新規に導入した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度まで予定していた把持システムの開発について,先行研究の結果よりも高精度に計測できることが実証でき,目標を満たすことができている.2020年度に予定している生体の機械的特性の測定についても,模擬生体試料を用いた測定に既に着手しており,今後の検証の有効性評価についても,その手法に目途が付いている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は試作した生体把持機構により生体を用いた把持実験を行い,生体の力学的作用による反力や変位データなどの機械的特性を測定する.実験結果より,必要があれば試作した機構の改良を行う.把持実験結果のデータを分析して病理的因子を抽出し,機械的特性-病理モデルを構築する.生体は主に粘弾性を持つことが広く認識されているが,モデル解析では把持した際の応力-変位曲線や,摩擦力から生体表面の機械的特性の特徴を抽出し,病理的変化と因果関係を特定することを目指す.
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