微細作業において液圧駆動を利用することで把持力および変位を推定し,生体の柔らかさや粘性抵抗などを数値化されたデータとして取得し,生体の機械的特性を計測できるマイクロ鉗子の開発を目的とした. 令和元年度では,高精度なセンサ機能を有する生体把持システムを開発を行った.研究代表者は先行研究において,液圧駆動機構を用いた把持機構を開発し,供給液量と内圧変動を計測してアクチュエータにかかる力と変形量を推定する手法を確立している.この原理を基に生体内での臓器や血管の把持を容易に行える把持機構の試作を行った.また把持実験において生体内における測定実験を行うためには,試作した機構を生体に近づける必要があるため,粗動機構としてアームロボットを新規に導入した. 令和2年度では,生体を用いた把持実験を行い,生体の力学的作用による反力や変位データなどの機械的特性を測定し,これを解析した.実験結果より測定精度をより向上させる必要が生じたため,測定結果の解析と並行して,機構の改良を行った.把持実験の解析結果より正常な生体組織の機械的特性を同定した. 令和3年度では,病理的変化を模した生体模擬モデルの測定を行い,生体の機械的特性における病理的因子を抽出する可能性について検討を行った.同時に生体における機械的特性モデルの高精度化を行った. 本機構の実現により,鉗子を操作するオペレータへ把持対象の状態や病理的変化を伝えることが可能となり,また取得したデータの解析により機械的特性から病理的因子を抽出することで,機械的特性の変化と病理的変化の因果関係の解明にも繋がる.将来的にはDaVinci等の手術支援用マニピュレータに力覚機能を付加することや,マニピュレータが生体の病理的変化を捉える“触診が可能なマニピュレータシステム”の実用化が望める.
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