研究課題/領域番号 |
19K04314
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
小林 邦和 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (40263793)
|
研究分担者 |
鈴木 拓央 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (80709303) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 分人 / 個性 / ソフトコンピューティング / ヒューマン-ロボットインタラクション / コミュニケーション / ロボット / 知能化 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
現状のサービスロボットは,サービスを提供する人間に応じて,個人に応じて対応を変えることが難しく,画一的なサービスしか提供できないという本質的な問題を抱えている.本研究では,この問題を解決するために,研究代表者が提案している分人モデルを用いて研究を進めている.なお分人とは,他者との反復的なコミュニケーションを通して,他者ごとに自己の内部に形成される概念である.他者とのインタラクションにおいて分人を用いることで,人間のような柔軟なインタラクションが実現できるという方針の下で研究を進めている.研究代表者は世界で初めて分人という概念をニューラルネットワークを用いてモデル化した.しかしながら,従来モデルは,学習に膨大な時間を要し,かつ新しい記憶項目を追加学習することが難しいという問題を抱えていた.本研究では,この問題を解決するため,オンライン学習に適したガウス過程に着目し,昨年度までにそれを用いて分人モデルの再構築を行なった.その結果,学習の高速化や追加学習が達成できることを計算機シミュレーションにより検証した.また人間のような柔軟なヒューマン‐ロボットインタラクションを実現するためには,他者ごとに分人モデルを生成することと,同程度に信頼性の指標を分人モデルへ導入することが重要であることが明らかとなった.今年度は,これまで人工的なデータセットを用いて分人モデルの検証を行なっていたが,実際の会話データセットに置き換え,実応用を目指した検証を行なった.同時に異なる分人間を遷移する分人の分化という概念の実現も行った.今後は実ロボットへの実装とロボットに個性を持たせることに挑戦する.本研究では,ロボットの個性は固定されたものではなく,人間のようにロボット自身が経験(学習)を積むことにより,変化(成長)できることを示し,柔軟なヒューマン‐ロボットインタラクションの実現を目指している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度から2023年度初頭までの約3年間は,コロナ禍で研究活動が制約された状況ではあった.しかしながら,学習の高速化を目指して,オンライン学習が容易なガウス過程を用いた分人モデルの再構築や対話データを用いた分人モデルの評価検証が行えた.この分人モデルは個人向け分人,集団向け分人,一般向け分人の3種類を実現しているが,これまで一般向け分人から個人向け分人,あるいは集団向け分人から個人向け分人への分化という概念の実現が課題となっていた.今年度はこの課題を実対話データを用いて実現することに成功した.
|
今後の研究の推進方策 |
分人の概念は,(1)個人向けの分人(Individual-Oriented Dividual),(2)集団向け分人(Group-Oriented Dividual),(3)一般向け分人(Society-Oriented Dividual)の3種類が存在する.分人の概念では,人間はこれら3つの分人を対面した人間に応じて切り替えることで,柔軟なインタラクションを実現していると考えられている.現段階では,分人モデルは実対話データを用いた学習状況により,これら3種類を実現できることを確認している.今後,コロナ禍の3年間は実機(ロボット)実験が実施しにくい状況であったので,提案モデルの実機を用いた性能検証を行っていく.最終的には,例え同じ状況であったとしても,ロボットに備わった個性により,対面する人間に応じて,臨機応変に異なる対応が可能となることを目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究開始2年目の2020年度から2022年度までの2年間,コロナ禍により研究成果の発表がすべてオンライン形式となり,当初計画していた旅費の支出がなくなり,また実ロボットを用いた検証実験が3年間滞っていたことが主な理由である.次年度の旅費に関しては,対面での学会発表が主となっているので,ほぼ残予算が使用できる見込みである.
|