研究実績の概要 |
小腸内には医療・健康等の面で有用だと思われる細菌が多数生息しているが,現在の検査方法(内視鏡カプセル検査・排泄物検査等)では小腸内細菌の回収が難しく,詳細な研究は進んでいない.それを踏まえ,本研究では小腸内体液のみを回収できる小型デバイスについて開発を進める.この研究の目的は,効率的に小腸内体液を回収できる,経口投与後に体内で動作できる磁気駆動小型ロボットを実用化させ,小腸在住細菌の詳細な検査・診察・研究をより簡単に遂行させることにある.先行研究のデバイスではゴム板の復元力を利用して駆動させたが,実際に駆動する際に側面ゴム板が腸壁に干渉する可能性から,想定した挙動ができない危険があった.またデバイス製作の再現性が低いことも課題であった.これらを踏まえ,今年度は小腸内で駆動させやすい新機構の検討および3Dプリントによるデバイスの作成,また臨床試験に向けた各種駆動試験を主な研究事項とする. 2019年度の研究成果として,磁気駆動小型ロボットの形状の改良,吸引水分量の計測,吸引口の形状改良,および豚小腸を用いた吸引実験を行った.ロボット形状は,従来は板バネ式のものを用いていたが,それでは板バネが広がり,腸内を傷つける恐れがある.本年度は,これを通常のバネ形状ならびにアコーディオン形状にすることで,吸引力を上げつつ収縮時の堆積を縮小することを実現した.これにより,腸内を傷つけることなく吸引が実現する.作成した磁気駆動小型ロボットにつて,吸引量を計測した.吸引には2mlが理想であるが,1ml程度の吸引量であった.PCR検査により腸内の細胞の同定を行うが,1mlでもPCRによりDNAを増幅させることで,計測時間が若干増加するが,問題なく細胞の状態を計測することが可能である.
|