本研究では,薄型柔軟素材で被覆されたシリアルリンクロボットの力学特性について検討している.本機構は,能動回転関節を樹脂袋に入れ,真空包装技術を利用することで被覆しており,この手法をロボットパッキング法と呼んでいる.前年までに構築した力学モデルより,被覆した薄型柔軟素材とリンクの間に滑りがない場合,リンクを回転させるために必要なトルクは,薄型柔軟素材を伸ばすために必要なトルクが主となることが明らかになっている.また,被覆した薄型柔軟素材とリンクの間に滑りがある場合,リンクを回転させるために必要なトルクは,摩擦係数に依存することが明らかになっている.令和3年度では,このモデルをロボットパッキング法で製作されたロボット以外にも適用することが可能であることを確認した.本モデルを,外殻をシリコンで製作する魚型水中ロボットにも適用した.このロボットの場合にも,被覆した薄型柔軟素材とリンクの間に滑りがある場合に低トルクモータでのロボットが駆動可能であると予想された.これを,実機を製作することで実証した.この実機では,外殻をシリコンで製作し,リンクと外殻を密着させないことで,滑り運動を実現した.前年までに得られた成果とあわせて,実機を通して本研究で得られたモデルが,薄型柔軟素材で被覆されたシリアルリンクロボットを製作する際の設計指針の1つとなりうることが明らかになった.また,ロボットパッキング法は能動回転関節だけでなくセンサシステムの被覆にも利用できることを実験的に明らかにしている.令和3年度では,温度センサを被覆し,被覆下においてもセンサが十分に機能することを実験的に明らかにした.
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