研究課題/領域番号 |
19K04319
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
田中 芳夫 香川大学, 創造工学部, 客員研究員 (30357454)
|
研究分担者 |
藤本 憲市 香川大学, 創造工学部, 准教授 (20300626)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 光ピンセット / 知能機械 / マイクロ・ナノデバイス / マイクロマニピュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では,1台の光源からのレーザ光を2本の偏光ビームに分割し,この2本の腕に対応する各々のビームに対し,マイクロ操作時のエンドエフェクタとなるレーザ光焦点位置や高輝度光パターンを精密に実時間制御できる多点光ピンセット光学系を構成することで,双腕多指ハンドとして機能する光マニピュレータを開発する。この制御観測系に,光学顕微鏡下の観測画像の実時間画像処理と画像再構成技術を統合することで,微小物の視覚認識に基づいた能動的な捕捉・把持と双腕系の協調動作を用いた非接触3次元マイクロ操作と計測技術の高度化・自動化について検討する。これにより,光ピンセットマイクロ操作技術の学術的確立と共に,3次元細胞生物学や顕微熟練作業の自動化に貢献できる基盤技術を開発することを目的とする。本年度に得られた主な成果は以下のとおりである。 1.双腕光マニピュレータの開発:昨年度試作した双腕3次元光ピンセットシステムを研究代表者の移籍にともない光学素子配置を見直し,再度光学設計とシステム構築を行った。双腕操作時のユーザインタフェースとしては,昨年度検討した3次元触覚デバイスFalconを2台利用する制御系を採用し,新たに双腕協調作業時に接触力を検出し,提示する方法を提案した。双腕マイクロ作業時に被操作対象とエンドエフェクタ間の接触力を作業者に提示できる方法は,これまで報告が無く,顕微熟練作業の高度化に貢献できるものである。 2.双腕走査型光ピンセットシステムの較正法: 光ピンセット操作時における接触力の提示や,多点光ピンセットで構築した多指ハンドによる微小物の把持においては,制御指令で指定した位置への高精度なレーザ光焦点位置の制御が不可欠である。ミラー走査型光ピンセット制御システムにおける観測系と制御系の間の非線形な歪みを較正する方法を提案し,開発した双腕光マニピュレータに適用することで有効性を実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症によるテレワークや研究協力者としての学生の構内立ち入り禁止など,研究遂行上の物理的制約を大きく受けた1年であったが,研究代表者所属が研究分担者と同じになり,同一実験室内で双腕光マニピュレータの開発と微小物内外部の多面的観察の実験を行えるようになった。微小物内外部の多面的観察のための光学実験系の構築が遅れているが,光マニピュレータによる双腕協調作業時の接触力提示方法などを検討し,これら成果を計2件の学会での研究発表として行うことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
研究協力者としての学生の大学構内立ち入り禁止など,次年度の新型コロナウイルス感染症の実験遂行への影響が見通せないが,ほぼ当初の計画どおり研究は進捗しているので,得られた知見については,国際誌への論文投稿をオープンアクセス化することなどで,広く国内外へ公表できるように努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による大規模集会の自粛で,研究発表を予定していた国内外の学会が全てオンライン化や中止になり,研究発表のための出張旅費全額と学会参加費などが未使用になり,60万程度の残額が生じた。これら未使用繰り越し分については,新型コロナウイルス感染症の次年度の学会開催への影響を早期に見極め,次年度に計上している旅費,参加費を含め,投稿論文のオープンアクセス化費用や実験装置の購入費用など,研究遂行がより円滑になるよう進捗に応じて機動的に使途変更して使用する予定である。
|