研究課題/領域番号 |
19K04321
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
羽賀 望 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50638476)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インピーダンス展開法 / モーメント法 / 回路モデリング |
研究実績の概要 |
本研究では,電気的小形デバイスの回路モデリング手法として提案しているインピーダンス展開法(impedance expansion method:IEM)の適用範囲を拡張し,実際的な無線電力伝送(wireless power transfer:WPT)システムに応用することを目的としている. まず,IEMにおけるモード解析法(導体のモード電流を求める手法)の適用対象が,これまで線状導体に限られていたところを,任意形状導体に適用できるように拡張した.これは,電界結合型WPTシステム用の電極や,誘電体基板上にプリントされたコイルなどを扱うために必要なことである.技術的には,従来型IEMを任意形状導体に適用しようとすると,固有値解析の際に不良条件となってしまっていたところを,導体上の電流を離散化するためにループ・スター基底関数を導入することで,この不良条件を回避することに成功した. また,従来型IEMでは,WPTシステムの周りに何も無い状況を想定していたが,システムの近傍に完全導体の散乱体がある場合にも適用できるように拡張した.これは例えば,電気自動車の無線充電システムにける車体の影響を考慮するために必要なことである.技術的には,コイル上の基底関数間の自己・相互インピーダンスを複素角周波数に関してローラン級数展開する際,これを導体による散乱波の影響を含んだ形で求めることで実現している.従来型IEMでは,散乱体の全てのモード電流を回路モデルの未知電流として扱わなければならないが,本拡張により,これらを未知数に含めなくても良くなるため,得られる回路モデルが小規模となる利点がある. そして,上記2つの研究内容を学術論文誌に投稿し,ともに採択されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的な目的の一つに,WPTシステムの周囲に樹脂,水,人体などの誘電体が存在する場合に対して適用できるよう,IEMの拡張を行うことを挙げていた.今年度の実績の一つである完全導体の散乱体を考慮するための理論は,上記目標の足掛かりであり,これをさらに拡張することで,上記目標が達成できる見込みである. 実務的には,任意形状導体に対応するように拡張された自己・相互インピーダンスの数値積分プログラムと,散乱体の寄与を考慮するアルゴリズムは,以降の研究にも,そのまま応用できるものとなっている. さらに,既述の通り,本年度は2本の論文が採択されている. 上記の理由から,本研究は順調に進展しているものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,完全導体の散乱体を考慮したIEMをさらに拡張して,誘電体・磁性体による散乱を考慮したWPTシステムの回路モデリングを試みる.これは例えば,WPTシステムの近傍に周囲に存在する樹脂,水,人体,フェライトシートなどの影響を考慮するために必要なことである. また,これまでに行なってきたIEMの拡張は,結合素子の自己共振を伴うメガヘルツ帯WPTシステムを対象としたものであったが,今後は,自己共振を伴わないキロヘルツ帯のシステムの回路モデリングに求められる拡張も行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により,国内旅行が幾つかキャンセルとなったため,わずかながら未使用額が生じた. 次年度,これを消耗品費や国内旅費として使用する予定である.
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