本研究は,電気的小形デバイスの回路モデリング手法として提案しているインピーダンス展開法(impedance expansion method:IEM)の適用範囲を拡張し,実際的な無線電力伝送(wireless power transfer:WPT)システムに応用することを目的として実施した. R1年度は,IEMにおけるモード解析(導体のモード電流を求める手法)の適用対象が,これまで線状導体に限られていたところを,任意形状導体に適用できるように拡張した.これは,電界結合型WPTシステム用の電極や,誘電体基板上にプリントされたコイルなどを扱うために必要なことである.また,従来型IEMでは,WPTシステムの周りに何も無い状況を想定していたが,システムの近傍に完全導体の散乱体がある場合にも適用できるように拡張した.これは例えば,電気自動車の無線充電システムにける車体の影響を考慮するために必要なことである. R2年度は,IEMの基礎となっている電磁界解析手法であるモーメント法における,誘電体基板上アンテナの正確な給電モデルを導出した.これは,IEMで誘電体基板上にプリントされたコイルなどを扱うために必要なことである. R3年度は,無損失の誘電体・磁性体による散乱を考慮できるよう,IEMを更に拡張した.この拡張されたIEMを用いて,フェライトシールド付きのWPTシステムの回路モデリングを行い,フェライトシールドによる漏れ磁束や不要放射の低減効果を回路素子値の変化として表せることを確認した. R4年度は,損失性誘電体による散乱を考慮できるよう,IEMを更に拡張した.実施内容については,現在査読付き論文誌への投稿を準備中である.
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