研究実績の概要 |
当初提案してた4つの回路トポロジーのうち,研究計画調書に記載した図1(c)の回路が本研究目的において最も適したコンバータ回路であることが分かった。本回路の各枝(ブランチ)における抵抗成分(FETオン抵抗,磁気デバイス巻線抵抗,フィルムコンデンサおよび電解コンデンサのESR,配線抵抗など)を実験的に精査し,それらの定量的精密測定を行った。特に,電解コンデンサのESRによる損失は他の抵抗損失に比較して大きく,このESR値測定が重要であり,LCRメータによる測定では直流電圧依存性を考慮できないことから,直流バイアス下における測定回路を提案した。磁気デバイスの巻線抵抗値は周波数依存性があるが,この中で近接効果による部分は巻線配置構造に依存するので,巻線配置を変えた磁気デバイスの試作と有限要素法による解析から,交流抵抗が比較的小さくなる巻線配置構造を見出した。これらの各枝抵抗を把握することで,本回路の実測損失が説明できることをシミュレーションと実験との比較から明らかにした。以上より,本回路の仕様から各回路定数を設計できる。 また,研究計画調書に記載されていなかった双方向DC-DCコンバータ回路を研究機期間中に考案し,その代表的な動作特性を確認した。本回路は,研究代表者らが以前にハイブリッド形DC-DCコンバータとして開発したものであるが,逆方向の電力伝送において,主素子のスイッチングタイミングを工夫することで,双方向動作が可能となることが分かった。 さらに,高周波電力用磁性体であるフェライトの磁気損失解析においては,前年度に実験事実として発見した,「異なる要因の2つの磁気損失があること」を,今年度には昨年度とは別のMn-Znフェライトにおいても認められることを検証し,この実験事実の普遍性を確認した。また,2つ目の磁気損失にあたる動的磁気損失を考慮した磁化特性モデルの汎用性を確認した。
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