研究課題/領域番号 |
19K04323
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
須貝 太一 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (20535744)
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研究分担者 |
江 偉華 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (90234682)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水中放電 / パルスパワー / 気液界面プラズマ / 水処理 |
研究実績の概要 |
3年目である2021年度の研究では、まず前年度に設計した針対平板の水中放電電極を製作し、水中での放電試験、水処理試験を印加電圧、電極間距離を変更しながら行った。放電試験では事前のシミュレーションと文献調査からの予測通り、1 MV/cm以上の電界でアーク放電を確認した。また、電界が大きいほどアークの強度が強くなるものの、放電のインピーダンスが減少するため放電消費エネルギーは減少することがわかった。水処理試験ではその放電による染料溶液脱色実験と生成過酸化水素測定実験を行った。その結果より、電界を大きくするほど染料の分解効率が増加する一方で過酸化水素濃度は減少傾向にあることがわかった。この要因として電界が大きい場合に次の3点が生じることを考察している。(1)電子エネルギーが大きくなり多くのOHラジカルが生成される。(2)電子と水の衝突間隔が長くなりOHラジカルの間隔が広がるのでOHラジカル同士の再結合が減少する。(3)放電による強い紫外線放射により過酸化水素が分解してOHラジカルに変換する。すなわち電界が大きいほどOHラジカルが多く生成し、有機物分解に寄与するといえる。 次に、水中放電のメカニズムを探るために、メインパルス電圧印加前に予備電圧を印加した場合の効果について調べた。その実験のために、50 kV程度のパルス電圧を印加でき、かつパルスの形やタイミングを自由に制御できる誘導電圧重畳型の電源を構築した。それを用いて放電電極に予備電圧をメインの電圧前に印加したところ、予備電圧がある臨海値を超えた場合にメイン電圧の絶縁破壊電界が減少することが確認された。この発見は世界初であると考えている。この理由としては、予備電界による局所的なジュール熱により気泡が生成したためであると予測しており、水中放電のメカニズムとして予想されている放電前の気泡生成を裏付ける実験結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は放電水処理のために最適なリアクタ構造を明らかにすることを目的としており、そのために水中放電、気泡内放電、水滴液面放電のリアクタを構築して様々な観点で比較を行う。これまでに水中放電の実験を行い、研究成果の欄で述べた通り、興味深い世界初の発見があった。しかしながら、水中放電の実現には電源の高電圧化やノイズ対策等のため多くの時間を要したため、残りのリアクタの評価はできていない。これらは最終年度にピッチを上げてまとめて行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では引き続き水中放電の実験を行うと共に気泡内放電リアクタ、水滴表面放電リアクタを構築してOHラジカル生成量、効率の評価、放電観測を行う。 水中放電の実験においては電界を更に上げた場合、予備電界を印加した場合、電極間隔を広げた場合について放電機構、OHラジカル生成効率の違いを評価する。気泡内放電、水滴表面放電については、まず実際に放電試験を行うことで染料脱色、OHラジカル生成量、過酸化水素生成量を確認する。次に印加するパルス電圧をパラメータとして、電圧電流波形、OHラジカル量を計測し、電圧、放電状態、OHラジカル生成との関連について電界シミュレーション結果も考慮しながら考察する。 また、各リアクタの放電発生機構を観測するために、ナノ秒レンジで撮影可能な高速度カメラを使う予定である。そのために、高速度カメラを所有する山形大学への出張実験を予定している。 これらの実験で得られたデータから最後に放電水処理における最適なリアクタについて考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度の予算として、当初旅費20万円を見込んでいたが、近年のCOVID-19の影響により国際会議、国内会議共にオンライン化されたため、その分の費用が未使用となっている。また、本来は気泡内放電リアクタを製作し評価する予定であったが、水中放電リアクタ実験環境の構築に時間がかかったため、その製作は未完了であり、その予算が未使用である。製作は最終年度に行う予定である。
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