最終年度は放電プラズマ水処理の最適なリアクタの調査のために、水中放電方式、大気圧プラズマに水滴を噴霧する方式、水滴表面放電方式について評価を行った。 水中放電方式については、水中絶縁破壊のメカニズムを考察するために、針対平板の水中放電電極に対して、メインの高電圧パルスを印加する前に予備パルスを印加しその影響を評価した。その結果より、絶縁破壊前にある一定以上の電圧を印加することで、水の絶縁耐力が数マイクロ秒程度減少することが明らかになった。 水滴をプラズマに噴霧する方式についてはプラズマ発生のためのパルス電圧形状の影響について調査し、パルスが長い場合に水処理効率が低下するのは、パルス後半部で電界が減少し電子エネルギーが低下するためであることを明らかにした。また、放電プラズマを水滴噴霧リアクタ外で発生させる方式とリアクタ内で発生させる方式を比較する実験を行い、その結果より大気圧プラズマに水滴を噴霧する方式における活性酸素(OHラジカル)の生成には、電子エネルギーによる水の解離の他にもオゾンと水の反応が重要な役割を果たしていることを明らかにした。 新たなに考案した水滴表面放電方式は、平等電界に水滴が存在する場合に水滴周辺に電界が集中することを利用して、水滴表面に放電を発生させる方式である。平等電界に対して水滴を噴霧し、水滴表面放電の撮影を試みたが、水滴表面電界が絶縁破壊電界を超える前に電極エッジ部での絶縁破壊が生じてしまったため、放電の確認ができなった。一方でシミュレーションより、水滴が電極空間に占める割合が大きい場合と電極に近い場合に、水滴周辺の電界強度が強くなることを明らかにした。 本研究機関全体を通して、最適なリアクタ構造を明らかにするために、上記のリアクタでの各種実験を行ってきた。結果として、現段階で最も効率が高い方式は大気圧プラズマに水滴を噴霧する方式である。
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