上下左右に移動できる次世代のロープレスリニアエレベータへの応用に向けて,高い推力密度を持ち低損失で高効率な高温超伝導リニアモータの実現を目指している。本研究では,一次側に集中巻の簡単な巻線を持つリニアスイッチトリラクタンスモータ(LSRM)を対象に,高温超伝導線材で巻線された実験機を作製し,実証実験,損失等の定量的評価および駆動システム,制御方法の確立を行うことを目的とした。また,これまでに研究されたリニアモータとの特性比較を行い,高温超伝導LSRMの利点や課題を解明する。研究期間を通じて実施した主な研究の成果は以下のとおりである。 [2019年度]1.高温超伝導LSRM実験機の設計:有限要素法解析を用いて,全長約1.3m,推力10N,速度0.3m/sの実験機を設計した。2.駆動システムの作製:50A振幅の方形波電流をLSRMに供給するインバータシステムを作製した。さらに,DSPを用いた制御システムを構築し,実験機の駆動システムを完成させた。3.電力測定システムの作製:実験機の電気的特性を測定するための電力測定システムを自作した。 [2020年度]1.高温超伝導線材の臨界電流特性の評価:実際に使用する高温超伝導線材Bi-2223テープ線材の,コイル作製時の曲げや引っ張りによる臨界電流の低下を実測した。2.実験機の最終設計:臨界電流特性の測定結果を基に,高温超伝導コイルの巻数および形状について再設計を行った。 [2021年度]1.実験機の作製:外注により可動部を除く部分の実験機の作製が完了した。2.従来機との性能比較:有限要素法解析を用いて,従来の常伝導LSRMとの性能比較を行った。高温超伝導コイルの冷却を含めた効率は常伝導LSMRの半分以下であり,高温超伝導コイルの低損失化が必要であることがわかった。ただし,高温超伝導LSRMは推力密度を大幅に改善できる利点を持つことがわかった。
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