研究課題/領域番号 |
19K04333
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
乾 義尚 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70168425)
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研究分担者 |
平山 智士 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (70759274)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電力工学 / 電力貯蔵 / 二次電池 / リチウムイオン電池 / 動作特性モデル |
研究実績の概要 |
本研究は,リチウムイオン電池を対象として,その交流インピーダンス特性を低温低周波領域も含めた幅広い条件で測定し,それを用いてより汎用性の高い電池の動作特性モデルを構築することを目的としている.研究は2019年度から3年間の予定で,2019年度は「交流インピーダンス特性を低温低周波領域で測定する手法の確立」と「低温を含む条件で低周波領域までの交流インピーダンス特性の測定」,2020年度は「測定結果のフィッティングによる交流インピーダンス特性の成分分離」と「分離後の各成分の温度および充電状態依存性の法則性の定式化」,2021年度は「ある条件の交流インピーダンス特性から他条件の同特性の推定手法確立」と「確立した推定手法を組み込んだより汎用性の高い動作特性モデルの構築」を行うというのが当初計画である. 2019年度は,まず,0℃から-20℃の氷点下の温度範囲での電池の交流インピーダンス特性の測定を行った.さらに,低周波領域の交流インピーダンス特性の測定に関して,電流遮断後の電圧過渡応答を周期性を仮定してフーリエ解析する従来手法を改良することにより,交流インピーダンス特性の算出精度が飛躍的に向上するタイムドメイン同定法を新たに提案・開発し,氷点下の低温を含む種々の条件で低周波領域の交流インピーダンス特性の測定を行った. 2020年度は,まず,電池の交流インピーダンス特性の高周波領域には緩和時間分布(DRT)法を,一方低周波領域には本研究で新たに開発した拡散時間分布(DDT)法を適用して交流インピーダンス特性の特性周波数を抽出し,その情報を利用したフィッティングを行うことにより,インピーダンスを電池内の各素過程に分離する手法を確立した.さらに,分離された素過程ごとのインピーダンスの温度および充電状態依存性を検討し,それらの抵抗成分の温度依存性はアレニウスの式に従うことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は本助成研究の1年目であり,当初計画では,リチウムイオン電池を対象として,「交流インピーダンス特性を低温低周波領域で測定する手法の確立」と「低温を含む条件で低周波領域までの交流インピーダンス特性の測定」を行うこととされていた.それに対して,まず,助成金により低温恒温槽を購入することにより,氷点下の温度範囲でも電池の交流インピーダンス特性の測定が可能になった.さらに,低周波領域の交流インピーダンス特性の測定に関しては,従来の電流遮断法を改良することにより,低周波領域の交流インピーダンス算出精度が飛躍的に向上した,タイムドメイン同定法を新たに提案・開発し,氷点下の低温を含む種々の条件で実際に低周波領域の交流インピーダンス特性の測定を行うことができた. 2020年度は本助成研究の2年目であり,当初計画では,「測定結果のフィッティングによる交流インピーダンス特性の成分分離」と「分離後の各成分の温度および充電状態依存性の法則性の定式化」を行うものとされていた.それに対して,まず,DRT法と本研究で新たに開発したDDT法を駆使することにより各素過程の特性周波数が検出できるようになり,フィッティングによる交流インピーダンス特性の成分分離の高精度化を実現することができた.さらに,分離後の各成分の法則性に関しては,それら中の電荷移動および拡散抵抗成分の温度依存性がアレニウスの式に従うことを明らかにすることができた. 以上より,これまでのところは,当初計画の目標を全て達成できており,本助成研究はおおむね順調に進展しているものと判断している.
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今後の研究の推進方策 |
研究は2021年度までの計画であり,最終年度である次年度も当初計画に従って研究を進めていく予定である.すなわち,リチウムイオン電池を対象として,「ある条件の交流インピーダンス特性から他条件の同特性の推定手法確立」と「確立した推定手法を組み込んだより汎用性の高い動作特性モデルの構築」を行う予定である. まず,2020年度までの研究により実現することができた高精度な交流インピーダンス特性の成分分離の結果を利用して,リチウムイオン電池の高周波領域から低周波領域までの全体の動作を模擬することができる等価回路の作成手法を確立する予定である.次に,その回路中の電荷移動および拡散抵抗がアレニウスの式に従うことをうまく利用し,低温での交流インピーダンス特性の測定結果を用いて,常温までの幅広い範囲での交流インピーダンス特性を推定する手法を確立する予定である.さらに,その確立した推定手法を従来からの動作特性モデルに組み込むことにより,より汎用性の高いリチウムイオン電池の動作特性モデルの構築を目指した研究開発を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延防止対策の影響で,2020年度に出席および成果発表を予定していた研究集会が全て中止あるいはリモートでのオンライン開催となったため,2020年度は国内および外国旅費の支出が発生しなかった.その結果,2020年度末の時点で約11万円の執行残額が発生した.この残額は,2021年度中に,研究に必要な物品の購入に充てることにより,有効に利用する予定である.
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