研究課題/領域番号 |
19K04337
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岡 正人 近畿大学, 工学部, 教授 (70281582)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波モータ / 精密位置決め制御 / アクチュエータ / MRI対応型手術支援ロボット |
研究実績の概要 |
本研究は超音波モータの精密位置決め制御回路に関する研究であり、将来のMRI対応型の手術支援ロボットのアクチュエータとして用いることを目的としている。超音波モータの精密位置決め制御の研究は少なく制御回路および制御手法を更に開拓していく必要がある。 現在までの研究により、超音波モータは±0.001deg.(直径60mmタイプ)の精度で制御できることを確認している。MRI装置の狭い空間(ガントリ部)においては、直径が60mmタイプではやや大きすぎ市販の最小の直径である30mmタイプをアクチュエータとして利用するのが理想的である(実際の利用としては非磁性のハーモニックギアを接続する)。しかしながら、この直径が30mmタイプの精密位置決め制御は今まで研究が行われておらず、そのデータもないのが現状である。 本研究では超音波モータの制御回路を新たに設計して、超音波モータの固定子上の進行波が正確に生じるようにする。当初の計画では、FPGAによってパルス幅を調整できるようにして、FETへ入力させるパルス幅を変えることによって回転速度を変化させる計画であった。しかしながら、実験の結果パルス幅を変えてもパルス幅と回転速度の関係は非線形性が強く、実際の制御では難しい面があった。 そこで本研究では制御回路をパルス幅ではなく、3つのパラメータ(電圧、位相差、周波数)を直接制御する手法を取り入れた。この3つのパラメータはDDS(AD9959)を使ってコンピュータ側から制御する。この信号をパワーオペアンプで±180Vの電圧を発生させて超音波モータを制御する。製作した制御回路は、圧電素子に加えている電圧のフィードバックが行われているためきわめて正確な正弦波を供給することができた。この回路では3つのパラメータを任意に変えることができるため共振周波数や印加電圧の異なる超音波モータもこの制御回路のみで制御できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、超音波モータの制御回路(電子回路)を新しく設計を行い、超音波モータの固定子上の進行波が正確に発生させる予定であった。これはFPGAによってパルス幅を調整できるようにVHDL言語によってロジック回路を構成して、FETへ入力させるパルス幅を切替えることによって回転速度を変えることにより実現させる内容であった。しかしながら、実験の結果パルス幅を変えてもパルス幅と回転速度の関係は非線形性が強く、実際の制御では難しい結論となった。そこで制御手法を見直してパルス幅ではなく、超音波モータの回転数に依存する電圧、位相差、周波数を直接制御する手法を取り入れた。この3つのパラメータをDDS(AD9959:アナログデバイセズ社)を用いることによってコンピュータ側から制御する。この信号をパワーオペアンプで±180Vの電圧を発生させて超音波モータを制御する。製作した制御回路は圧電素子に加えている電圧のフィードバックが行われているため、きわめて正確な正弦波を供給することができた。これは従来の昇圧トランスを使った手法では実現することはできない(昇圧トランスを用いると周波数によって印加する波形が疑似正弦波となってしまうため)。周波数の分解能は32ビット、位相オフセット分解能は14ビット、出力電圧の分解能は10ビットの性能を有している。また、3つのパラメータを任意に変えることができるため、共振周波数や印加電圧の異なる超音波モータにおいても専用の回路は必要なくこの制御回路のみで制御できる。 今回設計した回路は、正確な正弦波を超音波モータの圧電素子に供給できるため、特に低速時の回転速度が安定する。これにより精密位置決め制御が実現できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
製作した制御回路を用いて、直径が60㎜および30㎜タイプの超音波モータの精密位置決め制御を行う。制御回路はプリント基板に回路を実装して誤動作のない制御回路を作製する。最初に超音波モータに供給する電圧、位相差、周波数の3つの関係を詳細に測定する。従来の回路では電圧と関係を導くのは、昇圧トランスを使用していたため正確な関係性が表せなかった。しかしながら、開発した制御回路では正確な正弦波電圧が供給できるため、これらの3つのパラメータと回転数およびトルクの関係を導くことができる。特に超低速時にトルクが低下しないようなパラメータがどのよう値になっているのかを実験する。 次に精密位置決めの制御装置を作製する。超音波モータ、負荷およびエンコーダ(精密位置測定装置)を同軸上に配置してパソコンから制御をする。制御周期は処理速度の速いパソコンとDDSの命令の書込みに4ビットシリアルモードを使って1~2msを目標とする。この制御周期により精密でオーバーシュートが起きないような制御が行える。 制御手法は、一般的に多くの制御装置に使われているPID制御を用いる。超音波モータのような非線形特性に対応できる知的制御(ニューラルネットワークなど)の導入も考えられる。しかしながら、知的制御ではその有効性が確認されているが、長時間の制御においての安定性の問題などがある。ここでは各制御値の目的が明確なPID制御によって高精度な位置決めを実現させる。最初の目標としては30㎜タイプの超音波モータを±0.01deg.の位置精度を目指す。これが実現できれば、減速ギアにハーモニックギアなどを接続してきわめて正確に動作する手術支援アームが構築できる。また、60mmタイプでは±0.001deg.以下の位置制御性能を実現させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスのため、出張の取消しがあったため。
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