令和4年度は,①交流側に接続したLCフィルタにおける損失評価と,②交流側に接続したインダクタにおける損失評価を実施した.具体的には,Si-IGBTにより構成した三相電圧形インバータに各種パルス幅変調法(例えば,瞬時空間ベクトルによるPWM法と同様のスイッチングパターンを生成する三相PWM法(C3),指令値シフトによる三角波キャリアを用いた二相PWM法(D2),パルス電圧重畳による二相PWM法(P2)など)を適用した場合の,①交流側LCフィルタの損失(前年度の条件を見直して再実験を実施)と,②交流側インダクタでの損失評価を実施した.このうち②では,二相PWM法(D2,P2)のインダクタ損失はC3に比較して大きくなるものの,システム全体としての変換損失(=インバータ損失+インダクタ損失)は二相PWM法(D2,P2)が小さくなることを明らかにした.上記の成果は,電気学会の研究会などで報告した.なお,SiC-MOSFETにより構成された三相電圧形インバータにおいて上記と同様の評価を実施したところ,IGBTの場合と同様の結果を得ている(ただし未公表). 令和元年度から令和4年度の4年間の本プロジェクトにおける主な成果を纏めると,三相電圧形インバータに適用するPWM法の違いにより,直流側電解コンデンサの損失は大きく変化しない(同コンデンサの寿命に影響しない),交流側インダクタや交流側LCフィルタの損失はC3よりも二相PWM法(D2,P2)が大きい,インバータの損失を含めたシステム全体の損失はC3よりも二相PWM法(D2,P2)が小さい,ことが明らかになった.一方,本研究の目的のひとつであったパッシブデバイスによる損失発生のメカニズムの解明については,各パッシブデバイスにおける損失が同デバイスに流れる高調波電流の大きさに依存しないPWM法もあったことから明らかにすることができなかった.
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