細管に液体を封入し外部から加熱すると,液体が飽和温度に達しても沸騰せず液相を保ち,準安定な過熱状態になることが知られている。さらに温度を上げるとある決まった温度(過熱限界)で急激な沸騰(突沸)を起こす。液体窒素の過熱限界は110 Kである。この細管内の突沸現象を応用することにより、超伝導機器における局所温度上昇を細管端部に取り付けた圧力計で検出できると考えた。検証実験では,サブクール窒素を封入した長さ約16 mのステンレス細管(外径1.59 mm,内径 0.99 mm)に対し,任意の場所を局所的に加熱する実験を行い,細管内で発生する突沸現象を端部の圧力計で確実に検出できることを実証した。さらに,加熱パワー,ヒーターの長さを変えた実験を行い,それぞれの影響を調べた。加熱パワーの増加,ヒーターの長さの減少によって,突沸温度が過熱限界より低くなった。これは液体内部の温度分布が影響していると考えられる。そこで,有限要素法による温度分布解析を行い,加熱パワーと温度分布の関係を調べた。 次に最長50mの細管を用いて,圧力の伝播速度を測定した。その結果,圧力が液体窒素の音速に近い830 m/sで伝播することが分かった。このことから,キロメートルオーダーの細管でも秒オーダーで局所温度上昇を検出できる見込みを得た。 液体の種類と圧力によって過熱限界が変化するため,検出する設定温度の自由度もある。この手法が超伝導・低温機器のクエンチや温度異常検出に応用できる可能性は高い。
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