本研究では、アンテナや電磁界センサ等をスキャンする事で電磁波の分布をマッピングする手法ではなく、そもそも電磁界の観測において必須とされて来たアンテナや電磁界センサ等は用いず、特定の気体原子、レーザー光、可視化の対象となる電磁波の3者の間において、近赤外線領域で存在する蛍光作用を利用し、その作用を近赤外線領域で応答するカメラ等で撮影する事で実現する、新しいコンセプトの次世代型の電磁波可視化技術に関する研究を実施している。これまで既に申請者が実施した先行研究では、GHz帯の特定の電磁波に対する提案手法の実験的検証を実施している。本研究では、より低い周波数帯の電磁波に対する電磁波可視化の実現を念頭に、ターゲットとなる電磁波の周波数の拡張を目指している。 過去2年度間では、実験システムの構築と安定化の他、提案手法のフィージビリティースタディーを実施し、kHzの周波数帯でのループアンテナから照射される低周波帯の照射電磁波をトリガーとして、近赤外領域での蛍光の量の変化を、近赤外光の観測が可能なカメラで観測する事に成功した。また、その結果を静止画と動画のどちらでも記録可能なシステムの構築も行い、さらに外部DC磁界の印加によるゼーマン効果を利用した磁気副準位のレベルの変更による観測対象とする周波数の変更と拡張に関する検討も実施してきた。 本年度は、将来の具体的なアプリケーション先を見据え、非接触給電システムなどを観測対象にした検証実験を実施した。なお、電磁波には電界と磁界の両成分があるが、ここでは磁界成分を対象とし、また原子としては133Csの気体を用いている。また本年度は、本研究課題の研究成果に関連した国内学会等での発表を2件行っている。
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