研究課題/領域番号 |
19K04346
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
河辺 賢一 東京工業大学, 工学院, 助教 (60634061)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電力システム / 再生可能エネルギー / スマートインバータ / 広域制御 / 安定化制御 |
研究実績の概要 |
送電線への雷撃などの擾乱発生時に,電力系統内の同期発電機群が同期運転状態を維持する能力の度合いを過渡安定性と呼ぶ。過渡安定性が不十分な場合には,擾乱発生から数秒以内に発電機の同期が崩れ,停電の原因となる。今後,出力予測が難しい再生可能エネルギー電源(再エネ)が大量導入されることで,時間的余裕をもった運用計画が難しくなるため,既存の安定化技術だけでは電力系統の安定運転を維持できない恐れがある。 そこで本研究では,再エネが大量導入された電力系統における系統事故時の過渡安定性向上のために,再エネのインバータを制御対象としたオンライン演算型の広域制御理論を開発した。提案理論では,事故が発生する前の系統平常時に,オンラインの広域計測情報に基づき各想定事故に対する再エネ群の緊急制御動作を決定し,系統事故時に,高速情報通信網をつかって制御指令をローカル制御所から系統内の再エネ群に対して送信する。 提案理論による安定化効果を確認するため,国内外の電気学会で公開されている電力系統モデルに太陽光発電システム(PV)の大量連系を模擬し,計算機シミュレーションを行った。その結果,PVの連系点電圧によって制御する既存理論と比較して,提案理論では,さらに高い安定化効果が得られることを示した。 提案理論は,一つの想定事故に対して一度の時間領域シミュレーションにより緊急制御動作を決定できる。わが国で既に適用されているオンライン演算型の発電機脱調未然防止システムでも時間領域シミュレーションが実施されていることを鑑みると,提案法もオンライン演算型の緊急制御システムとして適用できる可能性が高い。そのため,時々刻々変化する電力潮流状態の変化に柔軟に対処でき,再エネの大量導入された電力系統においても有効に機能することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたオンライン演算型のインバータ制御理論を構築し,計算機シミュレーションによってその有効性を示すことができた。また,得られた結果を国際会議にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,提案理論の適用先として,太陽光発電システム(PV)の無効電力を主な制御対象としたのに対して,今後は有効電力も制御対象として,提案理論による安定化効果の検証に取り組む。 また,これまでの検討では,電力系統の事故時の過渡安定性を安定化できる理論を開発してきたのに対して,同じ時間領域で考慮しなければならない周波数安定性にも焦点をあて,その安定化を可能にする制御理論の開発に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた国際会議に参加できなかったことや,今年度の研究遂行に必要な計算機が予定よりも安く購入できたため,次年度への繰り越しが生じた。
(次年度) シミュレーションツールの構築業務やデータ収集業務に対するRA経費や,研究の推進に伴い追加で必要になると予想される計算機の購入に充てる。
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