最終年度である令和3年度は、当初の予定である三相部分スイッチング整流回路の応用に関する取り組みから、新たな回路構成の検討へ研究内容を変更した。新たな回路構成とは、従来の三相部分スイッチング整流回路において直流側に配置されているスイッチング素子を双方向スイッチに置き換えて交流側に配置した回路である。スイッチの接続位置を直流側から交流側へ移行することによって、インダクタンスを介して電源を短絡し電流を増加させる際に、その電流経路に存在したダイオードを削減することができる。それによって損失が低減され効率の改善が見込めると予想したため、本研究を先行して実施することにした。 本回路について、まずはシミュレーションで動作特性を検証し、概ね問題なく動作することが確認されたので、実験装置を作製した。実験を行ったところ、提案回路は従来回路に比べ、効率が最高で98.7%に達し全域で0.5%~0.8%の改善が確認された。力率や全高調波歪率に関しては従来と同等の特性であり、定格出力付近では95%以上の高い力率が得られているが、低出力時には70%程度まで低下した。 そこで、本回路の制御に2パルススイッチングを導入した。2パルススイッチングとは単相の部分スイッチング整流回路で既に適用されているスイッチング法であり、スイッチがオンする時に1パルスだけ追加してスイッチングを行う方法である。これについてもシミュレーション、及び実験で動作特性を検証した。2パルスを生成する際に1パルス目のオン時間、パルス間のオフ時間、そして2パルス目のオン時間の3つの時間を設定する必要があるが、その設定パターンは無限に存在するので、それぞれを少しずつ変化させながら最適値を導出した。その最適値を用いて実験を行ったところ、0.5kW~2kWの低出力時において力率が最大で10%改善された。またそれに伴い効率が0.2%改善された。
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