研究課題/領域番号 |
19K04350
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
舩木 修平 島根大学, 学術研究院理工学系, 助教 (00602880)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | REBCOの低温成膜 / REBCOの高品質化 / REBCOの液相成長 / REBCO線材の超伝導接合 |
研究実績の概要 |
RE系超伝導体には,重希土類(HRE)と軽希土類(LRE)を含む系があり,123組成ではLREの方が固相反応に必要な温度が高いが,潜在的なTcが高い.しかしながら,LRE3+はBa2+とイオン半径が近く,しばしばLREがBaサイトに置換しTcが低下することが知られている.一方,124組成ではREとBaの置換が生じにくいことが知られている.そこで,KOHをフラックスとして用いて低温でLRE124を成膜し,その後の熱処理で123組成に変態することで,高いTcを有するEu123膜を得てきた. また,これまでは12時間程度の熱処理時間を要していたため,基材の選択性に乏しかったが,Eu2O3, BaO2, CuOの各種原料をKOH融液に溶かした原料溶液を基材上に塗布することで,分オーダーのごく短時間での結晶成長を実現した.さらにこの塗布法による結晶成長は,単結晶基板だけでなく,RE系超伝導線材のREBCO相上にもEu124膜を形成することが可能であることを明らかとした. また,本手法の最大の利点はKOHをフラックスとした低温結晶育成であることから,この手法をRE系超伝導線材の超伝導接合技術に応用できないか試験を試みた.その結果,500℃程度の低温下でRE超伝導線材の超伝導接合に成功した. 昨年度までに成果として得られている「後熱処理を介した相変態による高特性化」は,現在までに接合試料では実現できていないが,今後,超伝導接合試料に対しても高特性化が可能か検討する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度以降に目標としていた「RE123膜中で磁束ピンニングセンターとなる,ナノサイズ不純物の形成」について相変態により余剰となったCuがCuOとして析出することを確認しており,さらにそのサイズの解析までを終えている.なお,分解のの都合で物質の同定はできていないが,CuOだと思われるサブマイクロオーダーの析出物も確認できており,これらがピンニングセンターとして機能することが期待できる. また,「様々な単結晶基板を用いたRE123膜の作製」については単結晶基板という基礎研究から発展し,金属テープ上REBCO薄膜を基板とした結晶成長を利用した,超伝導接合技術へと昇華させた.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでLREとしてEuを用いてEu124膜を成膜し,それを相変態させることで高TcなEu123膜を得てきた.そして,この相変態技術をRE超伝導線材の超伝導接合部にも適用できないか試みてきたが,接合界面での相変態による特性向上はこれまで実現できていなかった.この原因として,接合界面でEu124を成長させるのに12時間程度の時間が必要であり,その間にKOHでRE系超伝導線材のREBCO相が劣化することが考えられる,そこで今後は,界面で成長させるEu124の成長時間を分オーダーまで短縮することを試みたい.その結果,RE系超伝導線材のREBCOの劣化を防ぐ事が可能となり,相変態による特性向上が効果的になると期待できる. 最終的には,接合試料の磁場中特性を評価することで,相変態によるピンニングセンターの向上を明らかにしたいと考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
同様な装置,消耗品を扱う研究費として,学内公募の助成及び外部資金の獲得ができたため. 令和3年度は様々な当初予定の消耗品の他に,様々な基板の購入費として余剰金額を充てる予定である.
|